PRP療法についての解説!
最近、「PRP療法」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
スポーツ選手のケガ治療だけでなく、変形性関節症、美容医療など幅広い分野で注目されている再生医療の1つです。
しかし、一方で
・本当に効果があるのか
・幹細胞と何が違うのか
・安全なのか
・どんな人にむいているのか
と疑問を持つ方も多いと思います。
PRP療法はまだ発展途上の分野でもあるため、正しい知識を持ち、自分に合った治療かどうかを判断することが大切です。
今回は、医療従事者の視点から、PRP療法についてできるだけわかりやすく解説します。
目次
PRP療法とは?
PRP療法とは、血液を遠心分離機にかけて得られる「血小板を多量に含有する血漿分画」と広義に定義されており、PRP(platelet-rich plasma:自己多血小板血漿)という再生医療分野の1つです。
患者様ご自身の血液を採取し、専用キットを使用し遠心分離機にかけ作製後、痛みや損傷のある部位へ注射します。つまり、自分自身の血液を用いて傷んだ組織を修復させる力を引き出す治療法と言えます。
自己治癒力をサポートする治療として、アメリカやヨーロッパでは、手術後の傷口に対する治療やスポーツ選手のケガの治療にも頻繁に使われています。
そもそも血液成分には何があるの?
血液の成分と割合の図を示します。

血液は大きく分けると赤血球、白血球、血小板、血漿に分かれ、それぞれが身体を守るために重要な役割を担っています。
- 赤血球:全身へ酸素を運ぶ細胞。肺で取り込んだ酸素を筋肉や臓器、細胞に届け、二酸化炭素を回収。
- 白血球:身体を守る“免疫細胞”。細菌やウイルスなどの異物を攻撃し、感染や炎症から身体を守る。
- 血漿:血液中の淡黄色の液体成分です。栄養、ホルモン、タンパク質などを含み、体温調節やpHの維持に関与。
PRP療法の中心となるのが「血小板」です。
血小板とは?
血小板というと、血管が傷ついたとき、傷ついた場所に集まり血を固める働きというイメージが強く有ると思います。
勿論それも重要な役割ですが、実は血小板は
・組織修復
・炎症調節
・細胞の増殖促進
・細胞の保護効果
などに関わる多くの“成長因子”を含んでおり、それらを放出することで効果を発揮します。

上記が代表的な成長因子の種類と役割です。
これが傷んだ組織へ働きかけることで、身体が本来持つ「自己修復力」を引き出すことを利用しています。
PRP作製方法
血小板の濃度が濃いものをどう作るの?というご質問をいただきます。
そちらを今から説明いたします。
PRPとは、何度もお伝えしたようにご自身の血液を採血し、遠心分離機にかけて作製します。
遠心分離を行う理由は、血液に含まれる成分の重さの違いによって分けるためです。
遠心分離後の血液は主に次の3つの層に分けられます。
・血漿層:血小板が含まれる上層部分
・ゲルセパレータ層:血液成分を分離するための仕切りとなる層
・赤血球層:赤血球が集まる下層部分
このうち、成長因子を豊富に含む血小板が濃縮された血漿層を採取し、治療に使用します。

間葉系幹細胞による再生医療とは何が違うのか
幹細胞による再生医療は“軟骨になりうる細胞がある”ため、軟骨再生が期待できます。
一方で、PRP療法は
・傷んだ組織環境を整える
・修復反応を促す
・炎症バランスを調節する
という、身体が治ろうとする力をサポートする治療に近いと考えられています。
そのため、
・変形が比較的軽度
・まだ組織の修復力が残っている
という方ほど効果を感じやすい傾向にあります。
どんな方が対象なの?
PRP療法は整形外科だけでなく、美容分野でも活用されています。
そのためどの領域でのPRP治療を行うか分けて対象者を説明します。
整形外科領域
整形外科領域では
・変形性関節症
・その他関節の痛み
・その他外傷
・スポーツ障害 など。
変形性関節症に対するPRP療法では、
・初期~中等度
・ヒアルロン酸注射では改善しなかった
・手術はまだ避けたい
・痛みを軽減したい
という方に選択されることがあります。
関節の痛みは、関節内で悪いタンパク質の働きが活発になることで炎症が起き、軟骨の破壊成分の産生を促進することで関節破壊へと繋がると考えられています。PRPには、血小板から放出される成長因子やタンパク質が含まれており、炎症環境を整え、組織修復をサポートする働きが期待されています。
一方で、
・変形がかなり強い
・炎症が高度
・関節破壊が進行している
場合は、効果を感じにくい方が多いです。研究でも、年齢より「変形の程度」が効果へ影響しやすいと言われています。
現在も研究が進んではいますが、日本国内ではまだ十分なエビデンスが揃っているとは言えません。
しかし、海外では変形性関節症に対し
・ヒアルロン酸注射より高い有効性
・痛みや機能改善
を示した研究報告も増えています。
一方で、
・効果の個人差
・PRP作製方法の違い
・投与部位の違い
・症状の程度
などによって結果が変わるため、現在も研究が進められています。
安全性において、PRP療法では
・注射後の痛み
・一時的な炎症反応
などが起こることがあります。しかしこれらは、PRP後の好転反応と考えております。
他には非常に稀ではありますが、
・感染
・神経障害
・反応性関節炎
などが報告されています。しかし、国内外での実施状況として示した文献では、変形性関節症の患者を被験者(合計468名)として多血小板血漿の関節内注射を行った結果、いずれの文献でも多血小板血漿の関節内注射に起因することが疑われる重篤な有害事象の発生は報告されていません。
また当院では、エコー(超音波)を使用し、専門医が確認しながら注射を行っているため安全性が高いと言えます。
加えて、他院では難しいとされる股関節への局所注射にも対応しています。
美容医療領域
美容医療領域では「肌や頭皮の再生」を目的として行われています。
期待される効果として
・目元の小じわ
・たるみ改善
・ニキビ跡改善
・肌のハリ改善
・首や手のしわ改善
・頭皮環境改善
などがあります。
ヒアルロン酸のように“入れる治療”ではなく、自分の組織修復を利用する治療です。
そのため
・自然な仕上がりになりやすい
・肌質改善を目的とできる
・持続効果が比較的長い
といった特徴があります。
対象年齢は20-80歳程度ですが、80歳以上の方でも、医師が適応可能と判断した場合は治療を受けていただけます。
除外基準
整形外科領域でも、美容医療領域でも以下に該当する場合は、PRP療法を受けられないことがあります。
・妊娠中の方
・感染症を発症している方
・血小板機能異常を有する方
・敗血症など血液に関わる疾患を有する方
その他にも、患者様の健康状態や身体状況を踏まえ、医師が安全に治療を行えないと判断した場合には、治療をお断りすることがあります。詳細については当院来院後、医師による診察にて判断いたします。
当院のPRP療法
当院では、医師の診察により適応を判断した上でPRP療法を行っています。
治療の流れ
①看護師によるカウンセリング
②医師診察・適応判断
症状や画像所見、生活背景などを確認した上で適応を判断します。
③採血
患者様ご自身の血液を採取します。
④PRP作製
採取した血液を遠心分離機にかけPRPを抽出します。
当院では高度管理医療機器(クラス3)として承認されたPRP作製キットを使用しています。
※医療機器承認番号30400BZX00169000
⑤医師にて局所注射
エコー(超音波)で状態をリアルタイムで確認しながら、専門医が患部へ正確に注射します。
採取から注射まで安静を含め約1時間程度で完了します。
PRP療法は保険適応外であるため、自費診療となります。
PRP療法の安全性について
PRP療法は自分自身の血液のみを使用するため、
・アレルギー反応
・拒絶反応
などのリスクが非常に低い治療です。
また、PRP療法は“再生医療等の安全性の確保等に関する法律”に基づいて実施される再生医療です。
当院では、
・特定細胞加工物製造届出
・細胞加工施設の届出
・再生医療等提供計画の提出・受理
・認定再生医療等委員会による審査
など、法令で定められた手続きを行った上で治療を提供しています。
PRP療法後の反応は?
投与直後から数日程度で痛み、熱感、腫れ、だるさ等出現する可能性があります。
これは血小板から放出される成長因子によって、細胞活動や修復反応が活性化しているためと考えられており、多くの場合は一時的な好転反応です。
PRP投与後は30分程度から成長因子の放出が始まるため、早い方では当日から症状の変化を感じることがあります。
治療後の注意点
PRP療法は、組織修復の過程で起こる炎症反応も利用して治療を促します。
そのため治療後は
・強いアイシング
・NSAIDs(ロキソニンなどの抗炎症薬)
をできるだけ控えるように説明させていただきます。
炎症を過度に抑えすぎると
・血小板の働き
・成長因子の作用
・修復シグナル
を弱める可能性があると考えられています。
痛みが強い場合には、抗炎症作用の少ないアセトアミノフェン製剤の使用を検討することがあります。
PRP療法の効果
PRP効果は、海外文献によると、投与量に影響を受けることが報告されています。一方で、血小板の濃度を高くしすぎても効果は比例して向上せず、6倍以上の濃度で頭打ちとなる可能性も示されています。
変形性膝関節症に対する研究では、治療後1-2週間程度で効果が徐々に現われ始め、2か月程度から効果が実感されてくることが多いと報告されています。
ただし、効果の現われ方には個人差があり、年齢や病態、生活環境などによって経過は異なるため明確なものを提示することは難しいとされています。
PRP療法後のリハビリの重要性
PRP療法後は適切なリハビリが非常に重要となります。
PRPには組織修復を始める働きはありますが“どのような組織を作るか”を決定する働きはありません。
そのため、治療後の関節や筋肉に対して適切な刺激を加えることで、よりよい組織修復や機能改善に繋がる考えられています。
関節や筋肉は安静にしすぎても、負荷をかけすぎても状態が悪化することがあります。
PRPを行い集まった細胞や足場に対して、物理的な負荷(圧力をかける、伸び縮みさせる、こするなど)を加えることにより、その場所に必要な強度や特性を持った組織が形成されていきます。
そのため当院では、疼痛に応じて翌日からのリハビリを推奨しています。
状態に応じて
・関節への負担軽減
・歩行改善
・筋機能改善
・可動域改善
などを目的としたリハビリプログラムを作成し、治療効果を最大限に引き出せるよう患者様一人一人に合わせてサポートいたします。
よくある質問(Q&A)
Q.PRP療法後に痛みはありますか。
A.注射直後から数日は、細胞の活性な代謝が生じるため、軽い痛みや腫れ、赤みを生じることがあります。これは細胞活性による好転反応であるため様子観察を行い、徐々に軽減される方が大半です。治療について不安なことがありましたら、当院にご相談ください。
Q.副作用はありますか。安全性は?
A.PRP療法は自分自身の血液のみを使用するため、アレルギー反応や感染症のリスクが極めて低く、安全性の高い治療法です。重篤な副作用の報告もありません。
Q.どれくらいで効果がでますか。
A.自然治癒を利用しているため、効果の現れ方や持続期間については個人差があります。数週間から数カ月かけて変化を感じる方もいます。
Q.どんな方が対象ですか
A.変形性関節症に関しては初期から中等度の方や、疼痛が強い方、ヒアルロン酸注射を受けたが改善しない方に推奨しております。炎症が強く、変形も進んでいたり、変形性関節量のグレードも高い方はPRPでは効果が感じにくい方がいらっしゃいます。文献でも、年齢よりも変形の強度が効果感じやすさに影響がでやすいと言われています。
Q.メリットデメリットを教えてください。
A.メリット:疼痛の改善効果が期待できる、日帰り可能、治療後から普段の生活可能
デメリット:根本から治す治療ではない、個人差がある、数日間炎症(痛み、熱感、赤み、腫れ)を伴う場合がある
Q.ヒアルロン酸注射との違いは?
A.ヒアルロン酸注射は、関節腔内に注入されるとクッションのような働きをし、痛みを和らげる効果があります。そして関節内から徐々に減少・吸収され、再度疼痛が出現する可能性があります。一方で、PRPは組織の修復反応を促し、痛みや機能の改善を目指す治療となっています。また、投与した血小板自体は役割を終えると1週間程度でその働きはなくなりますが、放出された成長因子によって組織の修復反応は促され続けることで関節内の環境が整えられ、疼痛軽減が期待できます。
Q.どのくらいの頻度で行いますか。
A.国内外の文献では、3ー4週間ごとに行われている報告も多く、当院でも1~1.5カ月ごとの治療をご提案する場合があります。また、患者様の関節の状態や、日常生活での活動量など個人差があるため個別に相談させていただきます。
まとめ
PRP療法は、「自分自身の修復力を活かす再生医療」として注目されています。
まだ発展途中の分野ではありますが、大切なのは
・正しい知識を持つこと
・適応をしっかりと判断すること
・適切なリハビリと組み合わせること です。
近年PRP療法についての研究が進み、PRP療法といっても、調節方法、投与量、投与回数、他の治療との併用などの様々な報告があり、医療施設毎にその方法が異なります。PRPの効果についても、損傷の程度や血小板作用など個人差もあり、確実に効果があるとは一概には言えません。
気になる症状がある方は、まずはカウンセリングと専門医へご相談ください。