再生医療×リハビリテーション 変形性膝関節症ver.
目次
変形性膝関節症 とは
「歳だから仕方ない」と諦めていませんか?
歩き始めに膝が痛い。
階段が怖い。
正座ができない。
膝が痛くなるかもと外出を控えている。
そんな“膝の痛み”や“膝の違和感”は、日常生活の自由を少しずつ奪っていきます。
特に中高年以降で増加する「変形性膝関節症」は、日本でも非常に多い疾患のひとつです。
近年では、従来の保存療法だけでなく「再生医療」という新たな選択肢が注目されています。
さらに重要なのは、再生医療とリハビリテーションを組み合わせること。
単に“注射をする”だけではなく、その後の身体の使い方まで含めて治療を考える時代になっています。
| この記事でわかる事 ☑そもそも膝関節って何者? ☑半月板、靭帯、関節の役割 ☑変形性膝関節症とは? ☑変形性膝関節症に対する再生医療の効果 ☑再生医療で行える治療 ☑再生医療の種類と効果 ☑再生医療×リハビリテーションの相乗効果 |
膝関節とは
膝関節は「ただ曲げ伸ばしをするだけ」の関節ではありません。
私たちが普段何気なく行っている歩く、立つ、しゃがむ、階段を昇る・降りる。その全てに膝関節は深く関わっています。
実は膝関節は、身体の中でも特に大きな負担がかかる関節の一つです。また、体重を支えながら動く必要があるため、“安定性”と“動きやすさ”の両方が求められます。
膝関節は、太ももの骨(大腿骨)、すねの骨(脛骨)、お皿の骨(膝蓋骨)で構成されています。一般的には「膝関節は曲がる・伸びる」というイメージが強いですが、実際にはそれだけではありません。膝関節は曲げ伸ばしに加えて、わずかに“ねじれる”ような動き(回旋運動)も行っています。この細やかな動きがあることで
・歩行時にスムーズに脚を前に出せる
・方向転換がしやすくなる
・地面からの衝撃を吸収できる
・バランスを保ちやすくなる
など日常生活動作を自然に安定感を持って行うことができます。
特に歩行での膝関節は非常に重要な役割を担っています。実は歩行時の膝関節には体重の約3倍以上の圧迫力や剪断力がかかると言われています。(走行となると4-5倍もかかると言われています。)
※剪断力とは、互いにすれ違うように反対の力が加わり「ずらそうとする力」のこと。
歩行時の膝関節は、脚を前に出す時には適度に曲がり、つまずかないようにします。一方で、体重を支える場面では安定するように働き、衝撃吸収し、エネルギーを蓄え、力の伝達を可能にして身体を支えています。
つまり膝関節は、「動くための関節」でありながら、「身体を支える関節」でもあるのです。
さらに膝関節は、骨だけで安定しているわけではありません。骨形状よりもむしろ軟部組織により主たる制動を受けて安定性を得ていると言えます。膝関節には、
・軟骨
・半月板
・靱帯
・筋肉
など多くの組織が存在し、それぞれが役割を分担しながら膝を支えています。これらの組織が協力することで、私たちは日常生活を問題なく送ることができます。
しかし逆に言えば、どこか1つでも負担が蓄積すると、痛みや変形に繋がる可能性があります。

軟骨の役割
膝関節の表面には「関節軟骨」が存在します。
軟骨は骨同士が直接ぶつからないようにする“クッション”の役割を持ち、滑らかな関節運動を可能にしています。
この軟骨が傷つくと、
* 動くたびに摩擦が増える
* 炎症が起きる
* 痛みが出る
* 関節が変形していく
といった悪循環につながります。軟骨は血流が乏しく、一度傷つくと自然修復しにくい組織であることも特徴です。
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靭帯の役割
靭帯は、骨と骨をつなぎ関節の安定性を保つ組織です。特に膝では、
* 前十字靭帯
* 後十字靭帯
* 内側側副靭帯
* 外側側副靭帯
などが重要です。靭帯機能が低下すると、膝関節内で微細なズレが繰り返されます。
この“不安定性”は、軟骨や半月板への負担増大につながり、変形性膝関節症を進行させる要因になります。
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半月板の役割
半月板は、膝関節の内側・外側に存在する線維軟骨組織です。役割としては、
* 衝撃吸収
* 荷重分散
* 関節の安定化
* 関節軟骨の保護
などがあります。つまり、半月板は“膝への負担を分散する装置”とも言えます。半月板が損傷すると、関節への局所負荷が増加し、軟骨へのダメージ進行につながります。
膝関節の引っ掛かり感が強い場合は半月板の損傷を疑います。
そのほか、膝関節には滑らかに動かす「滑膜」や、クッションの役割を持つ「脂肪体」なども存在しています。これらはあまり聞きなれない組織かもしれませんが、膝の痛みや腫れ、動かしづらさに大きく関わる重要な組織です。
変形性膝関節症では、単純に“軟骨がすり減る”だけではなく、こうした周囲組織にも炎症や負担が生じることで、症状が強くなる場合があります。
変形性膝関節症とは
変形性膝関節症は、非常に身近な疾患です。
変形性膝関節症の潜在患者数は、日本で約2,500万人とも言われています。
これは日本人の約5人に一人の計算になります。
その中でも症状を有する方は約800万人以上とされ、高齢化に伴いさらに増加しています。
変形性膝関節症の方に起こりうることは、単なる「膝の痛み」だけではありません。
* 外出頻度の低下
* 活動量低下
* 筋力低下
* 転倒リスク増加
* 引きこもり
* 要介護リスク増加
など、生活の質(QOL)を大きく低下させる疾患です。
「歩くこと」は健康寿命と密接に関係しています。
米国の研究(JAMA 2021年)や京都府立医科大学などの研究では、1日7,000歩〜9,000歩歩くことは、 1日2,000〜4,000歩の人に比べて、全死亡リスクが約50%〜70%低下するという結果が出ています。ただし、適切な運動量は個人差があるため、その方に合うリハビリを当院では指導いたします。
膝の痛みは、全身機能の低下へ連鎖していく可能性があるのです。

どんな疾患?

変形性膝関節症は、加齢や長年の負担によって膝関節の軟骨がすり減り、炎症や変形が進行する疾患です。原因により一次性と二次性に分類されます。日本人の多くは、加齢や肥満、筋力低下が原因で大きな原疾患がない一次性変形性膝関節症を認めます。二次性は、骨折、靭帯・半月板損傷、リウマチ等の明確な外傷・病気が原因で発症するものです。
変形性膝関節症とは、加齢や負担の蓄積などにより、
* 軟骨の摩耗
* 半月板変性
* 炎症
* 骨変形
などが進行する疾患です。
主症状としては、膝関節痛です。初期症状としては、
* 立ち上がり時の痛み
* 動き始めの違和感
*こわばり
*鈍重感
程度ですが、進行すると、
* 歩行痛、自発痛、夜間時痛、安静時痛
* 可動域制限
* O脚変形
* 水が溜まる
などが出現します。そして、急な疼痛や引っかかり感を伴って可動域制限が生じれば半月板損傷や関節内遊離体の合併症も出現します。
患肢接地時,疼痛を避けるように歩く疼痛回避性跛行を呈し,関節破壊が重度であれば歩行荷重時に膝関節が側方に動揺する横ぶれ(thrust)を生じたり、膝が完全に伸びることなく歩いたり、左右非対称の歩行が特徴的になってきます。
従来の治療方法
これまでの変形性膝関節症治療では、
* 非ステロイド系抗炎症薬の内服
* ヒアルロン酸注射
* 運動療法
* 装具療法
* 体重管理
* 手術療法(人工関節など)
が中心でした。これらは痛み軽減や機能改善に有効ですが、傷んだ軟骨そのものの修復には限界がある場合もあり、一定の改善成績を上げてはいますが、病態の改善をさせるエビデンスには乏しいのが現状です。
そこで近年注目されているのが「再生医療」です。
再生医療でできること
再生医療では、
* 幹細胞
* PRP(多血小板血漿)
などを用いて、組織修復環境を整える治療が行われています。期待される作用としては、
* 炎症抑制
* 組織保護・修復促進
* 疼痛軽減
* 免疫調節作用
などがあります。特に幹細胞は、単に“細胞になる”だけではなく、サイトカインや成長因子を介して周囲環境へ働きかける点が注目されています。
上記であげている“幹細胞治療”と“PRP治療”はどちらも再生医療に分類されますが、働き方の違いがあります。
PRP療法(多血小板血漿)
自分の血液から“血小板”を取り出し濃縮して使用する治療です。血小板には、組織修復を助ける成長因子が多く含まれています。そのため、炎症や痛みを鎮め、自己治癒力を高めます。
比較的侵襲が少なく、発症初期~中等度の変形性膝関節症に対して使用されることが多いです。
メリットとしては、即日治療可能で、負担が少ないこと。デメリットとしては、効果が一時的である場合がある事です。
幹細胞治療
自分の脂肪などから採取した幹細胞を培養し関節へ投与します。幹細胞には、傷ついた組織修復を助ける、抗炎症作用といった働きがあります。単純に「軟骨を再生する」だけでなく、関節内環境を整えながら、組織修復をサポートしてくれます。
メリットとしては、高い組織再生能力、効果の持続性があること。デメリットとしては、培養に時間がかかる、費用が高い事です。
つまり、PRPは炎症を抑える!幹細胞治療は炎症を抑え、軟骨再生まで助ける!と言えます。
ただしここで重要なことは“注射をしたら終わり”ではないことです。
関節は、実際に身体を動かすことで機能します。そのため、再生医療後にどのように身体を使うかが非常に重要になります。
なぜ再生医療後にリハビリテーションを行うのか?
関節や軟骨などの組織は、単に“治療を受ける”だけではなく、適切な刺激が加わることで機能的な関節運動が促されると考えられています。
一方で、動かなさすぎる、過剰に負荷をかける、誤った動作を繰り返すといった状態は、関節環境へ悪影響を与える可能性があります。そこで重要になるのがリハビリテーションです。
リハビリテーションの目的
再生医療後のリハビリテーションでは、組織修復環境を整えながら、関節機能の改善を目指しています。
具体的には、
* 関節へ適切な荷重をかける
* 正しい関節運動を学習する
* 筋力を改善する
* 関節安定性を高める
* 歩行動作を改善する
ことを目的に介入します。
“適切な負荷量”は、再生医療とリハビリの相乗効果を生み出す鍵になります。
関節軟骨・半月板・靱帯・筋などの組織は、「適度な機能的刺激」によって代謝や修復反応が促進されることが知られています。
再生医療で投与された成長因子や細胞は、適度な荷重刺激を受けることで活性化されやすくなります。例えば、軟骨では圧縮刺激・関節運動・荷重変化によって細胞外マトリックス産生が促進されることが知られています。
また、リハビリテーションによる関節可動域改善・アライメント修正・筋機能改善・歩行改善が進むことで、局所へのストレス集中を軽減することが可能となります。
変形性膝関節症では、関節変形や異常歩行により、特定部位へ負担が集中していることが少なくありません。その状態で注射のみを行っても、関節へ加わる偏った負担は継続してしまいます。
そこで、リハビリを組み合わせることで、
・膝関節負担軽減
・股関節・足関節との連動改善
・荷重分散など
が可能となり、再生医療後の良好な関節環境を維持しやすくなります。
さらに、組織は“使われることで強くなる”特徴があります。適切な段階的負荷によりコラーゲン配列、組織強度、荷重耐性が向上し、再生された組織が実際の生活動作に耐えられる“使える組織”へと成熟していきます。
そのため重要なことは、「たくさん運動すること」ではなく、“今の組織状態にあった負荷”を選択することです。
つまり、“治す”だけではなく、“使える関節へ導く”ことが重要なのです。
そのため当院では、再生医療後も身体機能評価を行いながら、患者様一人ひとりに合わせたリハビリテーション介入を実施しています。
関節変形や歩行異常が進行している場合には、筋力訓練やストレッチのみでは十分な改善が得られないケースもあります。
軟骨摩耗や関節変形が進行した状態では、姿勢や歩行などの根本的な動作改善を行わなければ、最終的に痛みが再燃する可能性があります。
痛みを我慢し続けるのではなく、早期に適切な評価・治療を受けることが大切です。
まとめ
変形性膝関節症は、単なる「加齢現象」ではありません。
軟骨、半月板、靭帯、筋肉、動作。
それぞれが関係し合いながら進行していく疾患です。
だからこそ、 痛みや関節だけを見るのではなく“身体全体”を評価することが重要になります。
再生医療は、新たな可能性を持つ治療法のひとつです。
そして、その効果を最大限に引き出すためには、適切なリハビリテーションが欠かせません。
「もう歳だから仕方ない」と諦める前に。
今の膝の状態と、身体の使い方を見直してみませんか?