脳血管障害の再発予防のために!!
「もう二度と脳卒中にはなりなくない」
これは脳梗塞や脳出血を経験されたご本人、ご家族の多くが抱える共通の願いです。
しかし、実際には一度脳卒中を発症すると再発する可能性は決して低くはありません。
だからこそ大切なのは、「正しい知識」と「毎日の予防」、そして「継続したリハビリ」です。
目次
脳血管障害(脳卒中)とは?
脳血管障害(脳卒中)は、脳の血管に異常が起こる病気の総称です。
主に次の3つに分類されます。
* 脳梗塞:脳の血管が詰まる病気
* 脳出血:脳の血管が破れる病気
* くも膜下出血:脳の表面の血管(動脈瘤)が破れる病気

最も大きな危険因子は高血圧です。
高血圧が続くと血管が傷つき、動脈硬化が進行します。
特に細い血管が脆くなると、
急激な血圧変動(冬場の急激な温度変化、息こらえなど)に耐えきれず、
血管が破綻して出血を引き起こします。
その結果、
* 血管が詰まれば「脳梗塞」
* 血管が破れれば「脳出血」
* 動脈瘤が破裂すれば「くも膜下出血」
へと繋がります。
脳では何が起きているの?
脳は身体の中でも特に多くの酸素とエネルギーを必要とする臓器です。
脳梗塞では血管が詰まり、その先へ酸素が届かなくなり、
数分で脳細胞の働きは低下し、時間の経過とともに細胞は壊れてしまいます。
しかし、すべての脳細胞がすぐに死んでしまうわけではありません。
血流がわずかに残っている「ペナンプラ」と呼ばれる領域では、細胞はまだ生きており、
この部分はできるだけ早く治療を開始することで機能が回復する可能性があります。
一方で、時間が経つほど助けられる細胞は減少してしまいます。
実際には、治療開始が1分遅れるごとに約190万個の脳神経細胞が失われると報告されています
(Saver JL. Stroke, 2006)。
「少し様子を見よう」は危険です。
脳卒中は突然発症することが多い病気ですが、その前に
* 激しい頭痛
* めまい
* 手足のしびれ
* 力が入りにくい
などの症状が現れることもあります。
特に注意していただきたい症状は、
- 顔の片側がゆがむ
- 手足が動かしにくい
- ろれつが回らない
- 言葉が出にくい
このような症状が少しでもあれば、様子を見ずにすぐ救急車を呼ぶことが重要です。
脳梗塞では、
★ 血栓を溶かす薬(t-PA)は発症から約4.5時間以内
★血管内治療(カテーテル治療)は24時間以内(一部適応)
など、治療できる時間が限られています。
そのため、後回しにしたり症状が改善したからと言って安心するのではなく
すぐにかかりつけの病院を受診することをお勧めします。
脳卒中の後遺症
脳卒中では、
* 手足の麻痺
* しびれ
* 感覚障害
* 言語障害
* 高次脳機能障害
* 認知機能低下
* バランス障害
など様々な症状が現れます。
※症状には個人や、病変部位で大きく変わります。
特に脳出血は、被殻という部位に出血することが日本人で非常に多くみられます。
被殻のすぐ隣には内包という、脳から身体へ運動指令を送る重要な神経の通り道があります。
そのため出血が広がると内包も障害され、重い手足の麻痺を起こす可能性が出てきます。
日本人に脳出血が多い理由
日本人では、被殻や内包付近の脳出血が多いことが知られています。
その背景には、
* 高血圧
* 塩分の多い食生活
* 細い血管の構造
が大きく関係しています。
被殻へ向かう細い血管(レンズ核線条体動脈)は太い血管からほぼ直角に分かれているため、
高い血圧の影響を受けやすく、長年の高血圧によって血管がもろくなり出血しやすくなります。
再発のリスクはどれくらい?
脳卒中は一度発症すると再発しやすい病気です。
脳梗塞では
* 1年以内:約10%
* 5年以内:約35%
* 10年以内:約50%
が再発すると報告されています。
もちろん実際のリスクは持病や生活習慣、個人の状態によって異なります。
再発の原因
再発には次のような要因が深く関係しています。
* 高血圧
* 糖尿病
* 脂質異常症
* 心房細動などの不整脈
* 喫煙
* 飲酒
* 運動不足
* 肥満
* 薬を自己判断で中止すること
特に高血圧は最大の危険因子です。
毎日の血圧管理が再発予防には欠かせません。
今日からできる再発予防
再発予防は特別なことではありません。
毎日の積み重ねが脳を守ります。
① 血圧を管理する
高血圧を放置しないことが最も重要です。
② 薬を自己判断でやめない
脳梗塞では原因に応じて
* 抗血小板薬
* 抗凝固薬

などが処方されます。
「調子が良いから」と自己判断で中止することは非常に危険です。
③ 食生活を見直す
* 塩分を控える(1日塩分摂取量成人男性8g未満、成人女性7g未満、高血圧患者様は6g未満)
* 野菜を1日350g以上(毎日5種類以上の野菜)
* 果物を適度に摂る
* 食べ過ぎを防ぐ
* コレステロールを摂り過ぎない
ことを意識しましょう。
④ 禁煙・節酒
喫煙は血管を傷つけます。
飲酒も適量を心掛けましょう。
⑤ 適度な運動を続ける
ウォーキングや自主トレーニングなど、無理なく継続できる運動を行うことが大切です。
⑥ 脱水を防ぐ
脱水は血液が固まりやすくなるため、こまめな水分補給を心掛けましょう。
⑦定期的な受診をする
高血圧や糖尿病などの生活習慣病をしっかり治療することが再発予防に繋がります。

脳卒中の危険因子は、脳卒中再発の危険因子でもあります。
特に一度脳卒中を起こしているということは、危険因子を持っている方であるということですので、十分な注意が必要となります。
自主トレーニングも再発予防の一つ
退院後もリハビリが終了ではありません。
身体を動かさない生活は
*筋力低下
*耐久性の低下
*麻痺側の使用頻度の低下
* バランス能力低下
* 活動量低下
につながり、再発リスクを高める原因にもなります。
理学療法士から指導された自主トレーニングを毎日の生活に取り入れることで、
身体機能の維持だけでなく生活習慣病の予防にもつながります。
無理のない範囲で継続することが大切です。
しかしながら、自己流のリハビリには注意が必要です。
自己流で続けると、麻痺側をかばう「代償動作」が身につき、別の部位を痛めたり、
誤った動きを学習して麻痺側がさらに使いにくくなることがあります。
定期的に理学療法士など専門家に動きを確認してもらい、
適切な自主トレーニングを続けることが再発予防と機能維持に繋がります。
再生医療とリハビリの可能性
近年では、再生医療が脳卒中後の新たな治療として注目されています。
再生医療は、傷ついた脳そのものを元に戻す治療ではありませんが、
脳の回復しやすい環境づくりをサポートし、神経の働きを促す可能性が期待されています。
そして、その効果を最大限に引き出すために欠かせないのがリハビリテーションです。
リハビリでは繰り返し身体を動かすことで脳に適切な刺激を与え、
脳の「学び直す力(可塑性)」を引き出していきます。
再生医療とリハビリを組み合わせることで、
より高い機能回復を目指せる可能性があり、現在も多くの研究や臨床が進められています。
まとめ
脳卒中は再発しやすい病気ですが、多くの危険因子は日々の生活で改善できます。
「血圧を管理する」「薬を続ける」「適度に運動する」「食生活を見直す」
こうした毎日の積み重ねが、再発予防への第一歩です。
また、後遺症の改善や生活の質の向上には、継続したリハビリが欠かせません。
私たち理学療法士は、お一人おひとりの状態に合わせた運動指導や自主トレーニングの提案を通して、
「再発しにくい身体づくり」と「より良い生活」の実現をサポートしています。
再生医療とリハビリを組み合わせながら、「できること」を一つずつ増やし、
安心して生活できる未来を一緒に目指していきましょう。