症例紹介

CASE

バイク事故・くも膜下出血の後遺症を乗り越え、再びツーリングを目指す30代男性

  • 疾患名:脳卒中(外傷性 くも膜下出血)
  • 氏名:J様
  • 年齢:30代
  • 性別:男性
  • 症状:嚥下障害、下肢の脱力感(力が入る感覚がない、いつも力が入りすぎて疲れる)

 

来院までの経緯

J様が外傷性くも膜下出血を発症されたのは、当院へ来院される約1年前のことでした。

当時、J様は雨のなかをバイクで通勤しており、その途中で転倒事故を起こしました。周囲にいた方がすぐに救急車を呼び、病院へ緊急搬送されました。

搬送先で検査を受けた結果、「外傷性くも膜下出血」と診断されることになるのです。命に関わる状態であったため、その日のうちに開頭手術によって「クリッピング術※」が行われ、無事に一命を取り留めました。

 

※クリッピング術とは:脳動脈瘤の破裂による「くも膜下出血」の発生時の再出血を防ぐ。脳出血(特にくも膜下出血)の引き金となる「脳動脈瘤」に対する代表的な手術

 

手術後に残った、くも膜下出血の後遺症:嚥下障害と下肢の違和感

手術後の経過はおおむね良好でしたが、後遺症として、食べ物や飲み物を飲み込みにくくなる「嚥下障害」と、足に力が入りにくい感覚が残りました。

J様の場合、まったく歩けないわけではありませんでした。しかし、ご自身では足に力が入っている感覚をつかみにくく、必要以上に力を入れて歩いてしまうため、疲れやすさを感じていたそうです。

発症後は、急性期病院に約1か月入院し、その後、身体機能の回復を目指してリハビリ病院へ転院。約2か月間にわたって、嚥下や歩行を中心としたリハビリに取り組まれました。

 

リハビリで回復したものの、日常生活には悩みが残る

リハビリの結果、嚥下機能は徐々に回復し、食事は大きな問題なく取れるようになりました。

一方で、飲み物を飲む際には口からこぼしてしまうことがあり、液体をうまく飲み込めない感覚が残っていました。

また、歩行そのものには大きな問題はなかったものの、足に力が入りにくい感覚や、必要以上に力んでしまう状態は続いていました。

 

趣味や日常の楽しみを再び取り戻したい

J様はもともとツーリングが趣味で、日々の楽しみとしてお酒を飲むことも好きだったそうです。

しかし、事故後は足の感覚や嚥下への不安から、当然ながら以前のようにバイクに乗ったり、お酒を楽しんだりすることは難しくなりました。身体はある程度回復しているのに、好きだったことを思うようにできない状況に、少しずつストレスを感じるようになったといいます。

その様子を見ていたご家族やご友人が、「何かほかに治療法はないだろうか…」と調べ始めまして、再生医療に出会われたのです。

後遺症に対する治療選択肢として再生医療を知る

くも膜下出血や脳血管障害の後遺症について調べるなかで、治療選択肢の一つとして再生医療が行われていることを知り、当院へご相談いただくことになりました。

J様ご本人も、飲み込みや足の感覚に少しでも変化が得られれば、もう一度ツーリングや日常の楽しみを取り戻せるかもしれない。そんな想いを胸に、詳しい説明を聞くため、当院にカウンセリングのため、ご来院されました。

 

医師

 

医師からのコメント

J様は、くも膜下出血後に残った嚥下障害と、足に力が入りにくい感覚を主な悩みとして来院されました。

歩くこと自体はできていましたが、下肢に力が入っている感覚をつかみにくく、必要以上に力んでしまうことで疲れやすい状態でした。また、飲み物をうまく飲み込めず、口からこぼれてしまうこともあり、食事やお酒を以前のように楽しめないことを気にされていました。

そこで当院では、次の2点を治療とリハビリの目標に設定しました。

 

  • ・下肢の力加減をつかみやすくし、疲れにくく安定して歩ける状態を目指す
  • ・飲み込みに関わる機能を高め、飲食をより安心して楽しめる状態を目指す

 

これらの目標に向けて、脳血管障害後の症状に対する治療選択肢の一つとして、自己脂肪由来幹細胞を用いた再生医療をご提案しました。

あわせて、下肢の感覚や力の調整、歩行時の身体の使い方、嚥下に関わる動作を確認しながら、患者様の状態に合わせたリハビリを組み合わせて進める方針としました。

 

看護師

 

看護師からのコメント

来院時、J様はご自身で歩くことができ、会話もおおむねスムーズに行えていました。

一方で、「さ行」や「ら行」の発音にはやや聞き取りにくさがあり、話す際に口や舌を動かしにくい様子がみられました。

また、飲み物については、コップから直接飲むと口元からこぼれてしまうことを気にされていたため、院内でお出しする飲み物にはストローを付けて対応しました。

治療中は、血圧や脈拍、体温、酸素飽和度などのバイタルサインを確認しながら、体調の変化を見逃さないよう注意しました。

さらに、J様には下肢の脱力感があったため、投与時には無理のない姿勢を取れるよう体位を調整し、移動や立ち上がりの際には転倒・転落を防ぐための見守りを行いました。

安心して治療を受けていただけるよう、身体の状態に合わせた細やかな対応を心がけました。

 

 

リハビリの内容

J様の下肢の脱力感を軽減し、歩行時に必要以上に力まなくても身体を動かせるようにするため、まず運動機能や動作能力を詳しく評価しました。

その結果、次の2つを主なリハビリ目標に設定しました。

 

  1. 下肢に入れる力を自分で調整できるようになる
  2. 両脚を同時に持ち上げられるようになる

 

下肢の力をコントロールするための訓練

J様は、足にどの程度力が入っているのかを感じ取りにくく、歩く際に必要以上に力を入れてしまうことで疲れやすい状態でした。

そこで、下肢の筋力を高めるトレーニングを行いながら、力を入れる強さやタイミングを調整する練習を実施しました。強く力むのではなく、動作に必要な分だけ筋肉を使える状態を目指しました。

 

両脚を持ち上げるための体幹訓練

両脚を同時に持ち上げるためには、脚の筋力だけでなく、上半身を安定させる体幹の働きも必要です。

そのため、座った姿勢などで身体のバランスを保つ訓練を行い、体幹を安定させながら脚を動かせるよう練習しました。

これらのリハビリを通して、下肢の力加減をつかみやすくし、より疲れにくく安定した動作につなげることを目指しました。

 

まとめ・くも膜下出血の後遺症を乗り越え、再びツーリングを目指す30代男性

J様は、これまでに2回の幹細胞投与を受け、約3か月間リハビリを継続されました。

現在は、全身の筋力に変化がみられ、下肢の脱力感も以前より軽くなってきたと話されています。歩行時に必要以上に力を入れてしまう感覚についても、少しずつ変化を感じているそうです。

また、飲み物を口からこぼしてしまう症状については、1回目の投与後から口元の細かな動きに変化を感じたと、ご本人から報告がありました。

一方で、まだすべての症状が解消されたわけではありません。今後は、趣味だったツーリングを再び楽しめる状態を目指し、下肢の筋力やバランス能力を高めるためのリハビリを継続することを検討されています。

当院では、J様が日常生活の楽しみを少しずつ取り戻せるよう、今後も身体の状態や目標を確認しながら、継続的にサポートしてまいります。

 

監修:医療法人香華会リボーンクリニック本院