脳出血後の左半身麻痺から運転再開へ|再生医療とリハビリに取り組んだ61歳女性の症例
目次
- 1 脳出血後の左半身麻痺から運転再開へ
- 2 症例概要
- 3
- 4 来院までの経緯
- 5 自宅へ退院できても、以前の生活には戻れなかった
- 6 「生きる気力がない」と話されていた初診時
- 7 O様が掲げた3つの目標
- 8 幹細胞治療4回とリハビリを実施
- 9
- 10 左手と左脚の動きを引き出すリハビリ
- 11 記憶力・注意力を確認する高次脳機能訓練
- 12 身体だけでなく、気持ちにも寄り添う
- 13 下肢装具なしで歩けるように
- 14 左手にも目標を上回る動きがみられる
- 15 運転再開に向けた評価
- 16 自分で運転し、再び行きたい場所へ
- 17 表情が明るくなり、自分から会話をするように
- 18 次の目標は、5年ぶりの海外旅行
- 19 治療前後の変化
- 20 患者様の言葉
- 21 医師・リハビリスタッフからのコメント
- 22 脳出血後の生活を、もう一度広げたい方へ
脳出血後の左半身麻痺から運転再開へ
幹細胞治療とリハビリで生活を取り戻した61歳女性の症例
突然の脳出血によって、自由に歩くことも、車を運転することも難しくなったO様。退院して自宅へ戻ることはできましたが、発症前と同じ生活に戻れたわけではありませんでした。
行きたい場所へ自由に出かけられず、左手も思うように動かせない日々。次第に外出や人との交流も減り、当院へ初めて来院されたときには、
- 「生きる気力がない」
- 「藁にもすがるような気持ちです」と繰り返し話されていました。
それでもO様には、もう一度取り戻したい生活がありました。
- ・下肢装具を使わずに歩きたい
- ・左手を少しでも使えるようにしたい
- ・もう一度、自分で車を運転したい
その目標に向かい、O様は幹細胞治療とリハビリに取り組まれました。
症例概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 患者様 | O様 |
| 年齢・性別 | 61歳・女性 |
| 疾患名 | 右被殻出血 |
| 発症時期 | 2022年11月 |
| 主な後遺症 | 左上下肢の運動麻痺、感覚障害、高次脳機能障害 |
| 高次脳機能障害の症状 | 記憶力・注意力の低下 |
| 来院時の歩行状態 | 下肢装具と杖を使用 |
| 主な希望 | 装具なし歩行、左手の機能向上、運転再開 |
| 治療内容 | 幹細胞治療4回、継続的なリハビリ |
| 現在の経過 | 装具なし歩行、運転再開、家庭菜園や旅行に向けた活動を再開 |
来院までの経緯
自宅で突然倒れ、右被殻出血と診断
2022年11月、O様は自宅で突然倒れ、救急搬送されました。
病院で検査を受けた結果、脳の右側にある被殻から出血する右被殻出血と診断され、そのまま入院となりました。
発症後には、左半身を中心に次のような症状が現れました。
- ・左上肢の運動麻痺
- ・左下肢の運動麻痺
- ・左半身の感覚障害
- ・記憶力の低下
- ・注意を持続しにくい状態
- ・歩行能力の低下
- ・日常生活動作の制限
突然、身体が思うように動かなくなり、O様の生活は大きく変わりました。
自宅へ退院できても、以前の生活には戻れなかった
入院中の治療とリハビリを経て、O様は自宅へ退院することができました。しかし、退院できたからといって、発症前と同じ暮らしに戻れたわけではありませんでした。
以前は自分で車を運転し、行きたい場所へ自由に出かけていました。
ところが発症後は運転ができず、外出にはご家族の協力が必要になりました。行きたい場所があっても、思うように出かけることができません。左手も日常生活のなかでほとんど使えず、歩行時には下肢装具と杖が必要でした。
発症後に感じていた生活上の制限
- ・一人で自由に外出できない
- ・車を運転できない
- ・左手を日常生活で使えない
- ・歩行に装具と杖が必要
- ・趣味や人との交流が減った
- ・自分でできることが少なくなった
こうした状態が続くなか、O様は次第に塞ぎ込むようになりました。
「生きる気力がない」と話されていた初診時
O様が当院へカウンセリングに来院されたのは、2023年9月のことです。初めてお会いした際は表情がどこかお暗く、笑顔もほとんどみられませんでした。
O様からは、
「生きる気力がない」
「藁にもすがる気持ちで来ました」という言葉が何度も聞かれました。
脳出血による麻痺や高次脳機能障害だけでなく、できていたことが突然できなくなった喪失感も、O様の心に大きな負担を与えていました。身体機能を改善することはもちろん、もう一度生活への意欲を取り戻すことも、治療における重要な課題でした。
O様が掲げた3つの目標
カウンセリングでは、O様が今後どのような生活を送りたいのかを詳しく伺いました。O様が特に強く希望されていたのは、次の3つです。
1.下肢装具を使わずに歩きたい
装具を着ける負担を減らし、自分の脚でより自然に歩けるようになることを希望されていました。
2.左手を少しでも使えるようにしたい
発症後は左手が日常生活にほとんど参加していませんでした。
物を支える、つかむ、押さえるといった動作でも使えるようになりたいという希望がありました。
3.もう一度、車を運転したい
O様にとって運転は、単なる移動手段ではありません。
自分で行きたい場所へ行き、生活を自分自身で選ぶために欠かせないものでした。運転を再開することは、O様にとって自立した生活を取り戻す大きな目標でした。
幹細胞治療4回とリハビリを実施
O様には、治療の特徴や限界、リスクについて説明したうえで、幹細胞治療を4回実施しました。また、治療と並行して、左上下肢の機能や歩行能力、高次脳機能の改善を目指すリハビリを継続しました。
| 治療・訓練 | 内容 |
|---|---|
| 幹細胞治療 | 計4回 |
| 上肢訓練 | 左腕・左手の筋力訓練、動作練習 |
| 下肢訓練 | 左脚の筋力訓練、荷重練習 |
| 電気刺激療法 | 麻痺した筋肉の動きを促す訓練 |
| 歩行訓練 | 装具・杖を使用した歩行から段階的に練習 |
| 高次脳機能訓練 | 記憶力、注意力、判断力に関する課題 |
| 心理的支援 | 会話を通じた傾聴と意欲の維持 |
左手と左脚の動きを引き出すリハビリ
リハビリでは、左上下肢の筋力を高めるだけでなく、麻痺によって使う機会が減っていた左手や左脚を、再び日常生活のなかで使えるようにすることを目指しました。
左上肢へのアプローチ
- ・肩や肘を動かす練習
- ・手首や指を動かす練習
- ・電気刺激を用いた筋収縮の促通
- ・物をつかむ、支える動作
- ・両手を使う日常生活動作
左手を完全に元の状態へ戻すことだけを目標とするのではなく、現在残されている動きを日常生活に活かすことを重視しました。
左下肢・歩行へのアプローチ
- ・左脚へ体重をかける練習
- ・立位でのバランス訓練
- ・股関節、膝、足首の筋力訓練
- ・歩幅や足の運び方の調整
- ・杖や装具への依存を減らす練習
- ・屋外歩行を想定した訓練
装具なしで安全に歩くためには、左脚の筋力だけでなく、体幹の安定性やバランス能力も必要です。身体の状態を確認しながら、段階的に訓練を進めました。
記憶力・注意力を確認する高次脳機能訓練
O様には、記憶力や注意力の低下といった高次脳機能障害もみられていました。特に運転の再開を検討する場合、手足が動くかどうかだけで判断することはできません。
道路状況を理解し、周囲へ注意を向け、状況に応じて安全に判断する力が必要です。そのため、リハビリでは次のような高次脳機能の評価や訓練も行いました。
- ・一定時間、課題へ注意を向ける
- ・複数の情報を同時に確認する
- ・指示された内容を記憶する
- ・状況に合わせて判断する
- ・見落としや注意の偏りを確認する
- ・動作と認知課題を組み合わせる

身体だけでなく、気持ちにも寄り添う
O様のリハビリでは、身体機能の訓練と同じように、心の状態にも配慮しました。
治療開始当初は意欲の低下が強く、将来に希望を持つことが難しい状態でした。そのため、スタッフは一方的に訓練を進めるのではなく、O様のお話を丁寧に伺うことを大切にしました。
- ・今、何に困っているのか
- ・何がつらいのか
- ・何ができるようになりたいのか
- ・これからどこへ行きたいのか
- ・どのような生活を取り戻したいのか
目標を一緒に確認し、小さな変化も共有しながらリハビリを進めました。
下肢装具なしで歩けるように
治療とリハビリを開始して約3か月後の2023年12月、O様は下肢装具を使用せずに歩けるようになりました。
歩行状態の変化
| 時期 | 歩行状態 |
|---|---|
| 介入当初 | 下肢装具と杖を使用 |
| 治療・リハビリ中 | 左脚への荷重とバランス能力が向上 |
| 2023年12月 | 下肢装具なしでの歩行が可能 |
装具を外して歩けるようになったことで、移動時の負担が軽くなり、外出への自信にもつながりました。
左手にも目標を上回る動きがみられる
左手についても、治療前に目標としていた以上の動きがみられるようになりました。発症後は日常生活でほとんど使用していなかった左手を、少しずつ動作へ参加させられるようになりました。
左手の変化は、日常生活の利便性だけでなく、
「自分の身体がまだ変わる可能性がある」というO様の自信にもつながりました。
具体的にできるようになった動作が分かる場合は、次のような情報を加えることで、変化をより明確に伝えられます。
- ・物をつかめるようになった
- ・コップや皿を支えられるようになった
- ・衣服を押さえられるようになった
- ・両手を使った動作が増えた
運転再開に向けた評価
脳血管障害を発症した後に運転を再開する場合、安全性を慎重に確認する必要があります。O様についても、リハビリスタッフによる身体機能と高次脳機能の評価を行いました。
運転再開に向けて確認した項目
- ・ハンドルやペダルを操作するための手足の機能
- ・周囲へ注意を向ける力
- ・複数の情報を同時に処理する力
- ・記憶力
- ・判断力
- ・反応の速さ
- ・視野や見落としの有無
評価結果をもとに医師へ相談し、診断書を作成したうえで、公安委員会へ提出しました。その後、必要な手続きを経て運転再開の許可を得ることができました。
※運転再開の可否や必要な手続きは、症状や免許の状況、公安委員会の判断などによって異なります。
自分で運転し、再び行きたい場所へ
運転再開後、O様はご自身で車を運転して当院へ来院されるようになりました。また、自宅近くの畑へ出かけ、家庭菜園も再び楽しんでいます。
発症後は行きたい場所へ自由に出かけられず、外出そのものが減っていました。しかし、現在は、自分で予定を立て、自分の運転で外出できるようになりました。
O様が取り戻した日常
- ・自分で車を運転して通院する
- ・自宅近くの畑へ出かける
- ・家庭菜園を楽しむ
- ・人との会話を増やす
- ・外出の予定を立てる
- ・リハビリへ前向きに通う

運転の再開は、単に移動能力が戻ったということではありません。O様が自分らしい生活を取り戻す、大きなきっかけとなったのです。
表情が明るくなり、自分から会話をするように
身体機能や生活範囲が変化するなかで、O様の表情やコミュニケーションにも変化がみられました。初診時には笑顔が少なく、ほとんどご自身から話すことがなかったO様。
現在では、スタッフへ積極的に話しかけ、笑顔を見せる機会も増えています。
来院のたびに、
「ここに来てよかったです」と話してくださるようになりました。
リハビリの追加も希望され、現在は通院すること自体を楽しみにされています。
次の目標は、5年ぶりの海外旅行
O様が次に掲げた目標は、ポーランドに住むご友人を訪ねることでした。
2024年4月には、5年ぶりとなる海外旅行を計画されていました。長時間の移動や空港内の歩行、慣れない環境での活動には、歩行能力だけでなく、体力、注意力、荷物の管理など、さまざまな力が必要です。
そのため、海外旅行に向けて次のような課題にも取り組みました。
- ・長い距離を歩く練習
- ・疲労を考慮した歩行ペースの調整
- ・段差や階段の練習
- ・荷物を持ちながらの移動
- ・人の多い場所での注意力
- ・長時間の外出を想定した体力づくり
発症後に「生きる気力がない」と話していたO様が、再び海外旅行を計画するようになったことは、大きな変化です。身体機能だけでなく、未来を楽しみにする気持ちが戻ってきたことを、スタッフ一同も嬉しく感じています。
治療前後の変化
| 項目 | 治療・リハビリ開始時 | 現在 |
|---|---|---|
| 歩行 | 下肢装具と杖を使用 | 下肢装具なしで歩行 |
| 左手 | 日常生活でほとんど使用せず | 治療前の目標以上の動きがみられる |
| 運転 | 発症後は中止 | 評価と手続きを経て再開 |
| 外出 | 行きたい場所へ自由に行けない | 自分で運転して通院・畑へ外出 |
| 趣味 | 活動機会が減少 | 家庭菜園を再開 |
| 表情・意欲 | 笑顔が少なく、強い意欲低下 | 笑顔や会話が増え、リハビリを継続 |
| 新たな目標 | 将来への希望を持ちにくい | 海外旅行を目指す |
患者様の言葉
当院へ初めて来たときは、藁にもすがるような気持ちでした。身体が思うように動かず、車も運転できず、どこへも自由に行けない生活になり、生きる気力もなくなっていました。
治療とリハビリを続けるなかで、装具なしで歩けるようになり、左手も以前より動くようになりました。運転も再開でき、自分で病院へ来たり、畑へ行ったりできることが嬉しいです。
ここに来てよかったと思っています。今はリハビリへ来ることが楽しみです。
医師・リハビリスタッフからのコメント
O様は、右被殻出血後の左片麻痺、感覚障害、高次脳機能障害によって、歩行、上肢機能、運転、外出など、生活のさまざまな場面に制限がありました。
介入当初は、下肢装具と杖を使用して歩行されており、左手は日常生活でほとんど使用していませんでした。また、身体機能の低下だけでなく、生活への意欲が大きく低下していたことも重要な課題でした。
幹細胞治療4回とリハビリを行い、左上下肢への筋力訓練、電気刺激、歩行訓練、高次脳機能訓練を継続しました。その結果、O様からは、装具なし歩行や左手の動き、生活意欲などに変化を感じているとのお話がありました。
運転についても、身体機能と高次脳機能を評価し、医師と相談のうえで必要な手続きを進め、再開に至りました。
一方で、脳出血後の症状や回復の程度には個人差があります。再生医療によって、麻痺や高次脳機能障害が完全に回復することを保証するものではありません。
今後もO様が安全に生活し、新しい目標に取り組めるよう、身体機能と生活状況を確認しながら支援を続けてまいります。
脳出血後の生活を、もう一度広げたい方へ
脳出血後のリハビリでは、歩行や手足の動きだけでなく、
- □自分で外出したい
- □車を運転したい
- □趣味を再開したい
- □旅行へ行きたい
- □人との交流を増やしたい
といった生活上の目標を明確にすることが大切です。再生医療は、すべての症状を元に戻す治療ではありません。しかし、現在の身体機能や症状、発症からの期間、今後の目標によっては、リハビリと組み合わせて検討できる場合があります。
当院では、診察や身体機能評価を行ったうえで、再生医療の適応、期待できること、リスク、限界をご説明しています。
- 「退院後も麻痺が残っている」
- 「もっと自分でできることを増やしたい」
- 「運転や趣味を再開できる可能性を知りたい」
という方は、現在の状態と目標について一度ご相談ください。
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当院の特長:院内に隣接する細胞加工施設との連携
リボーンクリニック本院には、細胞の培養・加工を行う厚生労働省の認可得た「細胞加工施設」が隣接しています。
培養を終えた細胞は、凍結せず生きた状態の細胞浮遊液として、隣接する施設からクリニックへ直接運ばれます。細胞の加工から投与までの移動距離や時間を抑えられることは、当院の細胞治療体制における特徴の一つです。
また、脂肪由来幹細胞治療では、患者様の腹部などから採取した脂肪組織を用いて細胞を培養します。当院では、米粒2~3粒程度に相当する少量の脂肪組織から採取を行い、治療計画に応じて1億個以上の細胞数まで培養することが可能です。
当院の細胞培養・投与体制の特徴
・細胞加工施設がクリニックに隣接している
・培養後の細胞を凍結せず、投与施設まで直接運ぶ
・細胞の輸送にかかる時間や距離を抑えられる
・少量の脂肪採取による身体的負担の軽減に配慮している
・治療計画に必要な細胞数まで培養し、品質を確認したうえで投与する
再生医療、中でも幹細胞治療では、投与する細胞の数は勿論ですが、培養工程や品質管理、細胞の生存率、輸送方法、投与までの時間などを総合的に管理できる経験が重要です。選択時は、豊富な実績、投与する細胞品質でお比べください。
当院では、細胞加工施設と医療現場が連携し、培養から投与まで一貫して管理できる体制を整えています。