症例紹介

CASE

「もう一度、家族で旅行へ」変形性膝関節症に向き合った79歳男性の症例

  • 疾患名:変形性膝関節症
  • イニシャル:Y・O様
  • 年齢・性別:79歳 男性
  • 症状:変形性関節症による膝関節の疼痛
  •    関節軟骨の減少、関節裂隙の狭小化、骨棘形成

 

来院までの経緯

Y・O様は、60代で定年退職されてから10年以上、ご自宅の農園で野菜づくりを楽しんでこられました。

朝から夕方まで畑で作業することも多く、身体を動かすことが日々の楽しみだったそうです。

しかし、当院へ来院される約4年前から、少しずつ膝に痛みを感じるようになりました。

玄関で長靴を履き、立ち上がろうとしたときに膝が痛むことがあれば、寒い季節には畑へ向かう途中で痛みが出ることもありました。

 

畑へ向かう途中で転倒

70代になり、膝の痛みを感じる日が増えてきたある日、いつものように畑へ向かって歩いていたところ、足をつまずかせて転倒しました。

強い痛みがあったため、その日の農作業は中止。翌日、娘様に付き添ってもらい、病院を受診されました。

検査の結果、膝の「靱帯損傷」、「半月板損傷」に加えて、「変形性膝関節症」とも診断されてしまったのです。

画像検査では、膝関節の軟骨が減少し、骨と骨の間にある関節裂隙が狭くなっている状態や、骨の縁に骨棘が形成されていることも確認できました。

 

リハビリを続けても、歩行時の痛みが残る

転倒後は、週に1回病院へ通い、電気治療などのリハビリを受けました。

約1か月ほどが経過すると、靱帯損傷や半月板損傷による痛みは徐々に落ち着いてきました。しかし、立ち上がるときや、歩いているときの膝の痛みは残ったままで治る気配はありません。

転倒をきっかけに歩く機会も減てしまい、膝の痛みは鎮まるどころか次第に強く感じられるようになっってしまい、O脚が以前より目立つようになっていったのです。

 

10メートル歩くたびに休憩が必要な状態に

膝の痛みが強くなってからは、一人で買い物へ出かけることも難しくなり、お嬢様が付き添うことが増えました。

買い物中は、ゆっくり10メートルほど歩いては休憩し、また少し歩くという状態だったそうです。

その姿を見ていたお嬢様は、危機感を抱かれたのか「もう一度、家族みんなで旅行に行きたい」という思いを強く持たれるようになられたのです。

 

手術以外の治療法を探し、再生医療を知る

Y・O様とご家族は、変形性膝関節症に対して、ほかに検討できる治療法がないかインターネットで調べ始めました。

そのなかで、人工関節置換術などの手術だけでなく、ご自身の細胞を用いるて治療する「再生医療」が新たな選択肢として行われていることを知りました。

そこで、手術の適応や再生医療で期待できること、治療の限界について詳しい説明を聞くため、Y・O様は当院のカウンセリングへ来院されました。

 

医師

医師からのコメント

Y・O様の膝をX線で確認したところ、変形性膝関節症にみられる複数の変化が認められました。

具体的には、骨の縁にできる「骨棘」、骨が硬く見える「骨硬化像」、膝関節の隙間が狭くなる「関節裂隙の狭小化」などがみられました。また、膝蓋骨の周囲にも変形性関節症の所見が確認されました。

転倒による靱帯や半月板の損傷も軽度残っていましたが、膝の動く範囲を大きく制限するような所見はありませんでした。仰向けに寝た状態では膝を動かすことができていました。

一方で、立ち上がりや歩行など、膝に体重がかかる動作では痛みが出ていました。

 

長く歩き、家族と海外旅行へ行くことを目標に

Y・O様のご希望は、膝の痛みを気にせず長い距離を歩けるようになり、ご家族と一緒に海外旅行へ行くことでした。

現在、特に困っていたのは次の2点です。

 

  • ・椅子やベッド、床から立ち上がる際に膝が痛む
  • ・15分以上、または300メートル以上続けて歩くことが難しい

 

これらの症状や画像所見を踏まえ、当院ではPRP療法とリハビリを組み合わせた治療をご提案しました。

PRP療法は、ご自身の血液から抽出した血小板を多く含む成分を膝関節へ投与し、痛みや関節機能の改善を目指す治療です。

ただし、変形性膝関節症の進行度や症状によっては、人工関節置換術を含む他の治療が適している場合もあります。そのため、手術を避けることだけを目的とするのではなく、Y・O様の身体の状態や生活目標を踏まえたうえで、治療の適応を慎重に判断しました。

あわせて、立ち上がりや歩行時の膝への負担を減らし、下肢の筋力や動作の安定性を高めるためのリハビリも行う方針としました。

 

リハビリ

リハビリの内容

Y・O様が、立ち上がるときや歩くときの膝の痛みを減らし、より長く歩けるようになるために、まず運動機能や動作の特徴を詳しく評価しました。

その結果、次の2つを主なリハビリ目標として設定しました。

 

  1. 立ち上がる際に、骨盤と身体の重心をスムーズに前へ移動できるようになる
  2. 歩行時に身体をかばう動きを減らし、体幹を安定して使えるようになる

 

立ち上がり動作の練習

椅子やベッドから立ち上がる際に膝へ負担が集中しないよう、骨盤を前後に動かしながら、身体の重心を適切に移動させる練習を行いました。

膝だけの力で立ち上がるのではなく、上半身を前へ傾け、足裏へ体重を移しながら立ち上がることで、膝への負担を抑えた動作を目指しました。

 

歩行時の姿勢と身体の使い方を練習

Y・O様は、膝の痛みをかばうことで、歩行時に身体が傾いたり、必要以上に力が入ったりすることがありました。

そこで、膝に痛みが出にくい体重のかけ方や姿勢を確認しながら、体幹を安定させて歩く練習を行いました。

あわせて、歩行時に身体を支えるために必要な下肢や体幹の筋力トレーニングも実施し、より安定した歩行につなげることを目指しました。

これらのリハビリを、PRP療法の実施期間に合わせて、週1回、3か月間継続しました。

 

 

まとめ・「もう一度、家族で旅行へ」変形性膝関節症に向き合った79歳男性の症例

Y・O様は、3回のPRP療法と、週1回・3か月間のリハビリに取り組まれました。

治療開始前は、椅子やベッドから立ち上がるときや、歩いているときに膝の痛みを感じていました。治療とリハビリを続けた結果、現在は立ち上がり時の痛みを感じることが少なくなり、歩行中の膝の痛みについても軽減したと話されています。

転倒してからは外出する機会が減り、買い物にも娘様の付き添いが必要でした。しかし、膝の状態が変化するにつれて、再び一人で近所へ買い物に出かけられるようになりました。

これまで外出時には必ずそばで見守っていた娘様も、Y・O様がご自身で行動できる範囲が広がったことを、大変喜ばれていました。

 

家族旅行を目指し、歩く時間と距離を伸ばす

治療開始から3か月が経過した現在、次の目標は、より長い時間・距離を歩けるようになることです。

Y・O様は、当初から希望されていたご家族との旅行を目指し、ご自宅の周辺を歩きながら、少しずつ足腰を鍛えているそうです。

当院にも、外出の機会が増え、歩く練習を続けているとのご連絡をいただきました。これからも無理のない範囲で運動を継続し、希望されている生活へ近づけるよう、身体の状態に合わせてサポートしてまいります。

 

監修:医療法人香華会リボーンクリニック本院