症例紹介

CASE

休業した中華料理店を再開へ|再起を願い、左手のしびれに取り組んだ脳梗塞後の症例

中華料理

  • 疾患名:脳卒中(脳梗塞)脳血管障害
  • イニシャル:K.T様
  • 性別・年齢:48歳 女性
  • 症状:脳血管障害の後遺症、左手の痺れ
  • 治療:脂肪由来幹細胞治療:1回
  • リハビリ:週1回×3ヶ月

 

来院までの経緯

K・T様が脳梗塞を発症されたのは、当院へ来院される約5年前のことでした。

その日は、いつも通りご自宅のベランダで洗濯物を干していました。ところが、作業の途中で突然、強い頭痛に襲われ、そのまま倒れてしまいました。

しばらくして意識を取り戻したとき、K・T様はベランダに横たわっていました。頭には激しい痛みが残っていましたが、近くに助けを求められる人はいませんでした。

何とか身体を動かし、ご自身で119番へ電話をかけ、救急車を要請されました。

 

救急搬送され、脳梗塞と診断

搬送先の病院で検査を受けた結果、「脳梗塞」と診断されました。

急性期治療として、血栓を溶かすことを目的とした点滴治療が行われました。その後、身体機能の回復と自宅復帰を目指してリハビリテーション病院へ転院し、約3か月間入院されました。

リハビリを経て日常生活は送れる状態となり、ご自宅へ退院することができました。

しかし、「脳梗塞の後遺症」として、左手のしびれが残りました。

 

左手のしびれにより、中華鍋を振れなくなる

K・T様は、発症前までご家族と一緒に中華料理店を営んでいました。

退院後は、身の回りのことをご自身で行うことができ、日常生活に大きな介助を必要とする状態ではありませんでした。

一方で、左手のしびれによって手の感覚や力加減をうまく調整できず、仕事で使っていた重い中華鍋を振ることが難しくなりました。

家庭での生活は送れても、長年続けてきた仕事に戻ることができない。その現実は、K・T様にとって大きな負担となりました。

ご家族で営んでいた中華料理店は休業することとなり、以前のように厨房へ立てない日々が続きました。

 

「もう一度、厨房に立ちたい」

脳梗塞を発症する前、中華鍋を振りながら料理を作ることは、K・T様にとって日常であり、ご家族と築いてきた仕事そのものでした。

そのため、左手のしびれが残り、思うように調理ができなくなったことで、気持ちが落ち込むこともあったそうです。

 

  • 「もう一度、中華鍋を振りたい」
  • 「家族と一緒に店へ戻りたい」

そう願いながらも、どのような治療を検討できるのか分からず、悩む日々が続いていました。

 

息子様が見つけた再生医療

そのようなK・T様の様子を見ていた息子様が、SNSで脳梗塞後遺症に対する幹細胞治療の情報を知りました。

さらに詳しく調べるなかで当院を見つけ、治療内容やリハビリについて相談するため、K・T様とともに受診されました。

K・T様は、左手のしびれによる不自由さを少しでも軽減し、再び中華鍋を使って厨房に立つことを目標に、再生医療とリハビリを検討することになりました。

 

医師

 

医師からのコメント

K・T様は、脳梗塞後に残った左手のしびれによって中華鍋を振ることが難しくなり、「もう一度、厨房に立ちたい」という希望を持って来院されました。

日常生活はご自身で送れていたものの、左手のしびれが強く、重い中華鍋を支えたり、振ったりする際の感覚や力加減をうまく調整できない状態でした。

そこで当院では、左手のしびれによる不自由さを軽減し、調理動作につなげることを治療とリハビリの目標に設定しました。

 

もう一度、中華鍋を扱うために

中華鍋を振るためには、単に腕の力があるだけでは十分ではありません。

鍋の重さを感じ取りながら、手首や肘、肩を連動させ、姿勢を保ったまま安定して動かす必要があります。

そのため、脳梗塞後遺症に対する治療選択肢の一つとして、自己脂肪由来幹細胞を用いた再生医療をご提案しました。

あわせて、左手の感覚や力の入れ方、鍋を支える動作、手首・肘・肩の連動を確認しながら、実際の調理動作を意識したリハビリを組み合わせて進める方針としました。

 

看護師からのコメント

K・T様は、左手に力を入れると、しびれが強くなる状態でした。

そのため、診察や治療に伴う身体的な負担をできるだけ抑えられるよう、血圧測定は右腕で行いました。採血についても、左手の症状に配慮し、右腕から実施しました。

治療中は、左手のしびれの強さや体調に変化がないかを確認しながら、安全に配慮して対応しました。

看護師

リハビリの内容

K・T様が再び中華鍋を振れるようになるために、まず左手の感覚や力の入れ方、腕全体の動かし方を詳しく評価しました。

K・T様は、左手に力を入れるとしびれが強くなるため、単に筋力を高めるだけではなく、しびれを悪化させにくい力加減を身につけることが重要でした。

評価の結果、主に次の2つをリハビリの目標に設定しました。

 

  1. しびれ以外の感覚も捉えられるようになる
  2. しびれが強くなりにくい力加減を調整できるようになる

 

触ったものを感じ分ける練習

左手の感覚を確認するため、形や硬さ、素材の異なるさまざまな物に触れ、その違いを感じ分ける練習を行いました。

しびれだけに意識が向いてしまうと、手に触れている物の特徴や、握ったときの感覚を捉えにくくなることがあります。

そこで、物の形や表面の違いなど、しびれ以外の感覚にも注意を向けながら、左手で受け取った情報を確認する訓練を進めました。

 

力の入れ具合を調整する練習

中華鍋を扱うためには、強く握り続けるのではなく、鍋の重さや動きに合わせて力を調整する必要があります。

そこで、握力計を使用し、自分がどの程度の力を入れているのかを数値で確認する練習を行いました。

力を入れたときのしびれの変化も確認しながら、必要以上に強く握らず、安定して物を支えられる力加減を身につけることを目指しました。

これらの訓練を通じて、左手の感覚と力の調整能力を高め、実際に中華鍋を持つ動作へ段階的につなげていきました。

 

中華鍋

 

治療後の経過

K・T様は、脂肪由来幹細胞の投与を1回受け、週1回・約3か月間のリハビリに取り組まれました。

治療開始前は、左手のしびれによって中華鍋を扱うことが難しく、ご家族で営んでいた中華料理店も休業していました。

その後、リハビリを継続するなかで、左手の感覚や力加減を確認しながら動作練習を重ね、現在はお店の営業を再開されています。

中華鍋を振るところまでは至っていないものの、料理を運ぶ配膳の仕事ができるようになり、少しずつ厨房や店舗で過ごす時間を取り戻されています。

 

次の目標は、もう一度中華鍋を振ること

K・T様の次の目標は、発症前のように中華鍋を振り、調理の仕事に戻ることです。

そのためには、左手のしびれの状態を確認しながら、鍋を支える力や、手首・肘・肩を連動させる動作をさらに練習する必要があります。

現在は、目標の実現に向けてリハビリの継続を検討されています。

当院では、症状の変化だけでなく、日常生活の過ごしやすさや仕事への復帰も大切な目標と考えています。K・T様が再び希望する役割を担えるよう、今後も身体の状態と生活背景に合わせて支援してまいります。

 

監修:医療法人香華会リボーンクリニック本院