トイレの不安を無くしたい|脳梗塞後の左半身麻痺から歩行速度の向上|幹細胞治療とリハビリの症例
- ・疾患名:脳卒中(脳梗塞)脳血管障害
- ・イニシャル:S.H様
- ・性別・年齢:75歳 男性
- ・症状:脳卒中後遺症:左手足の運動麻痺、言語障害、顔面麻痺
- ・脂肪由来幹細胞治療:3回
- ・リハビリ:週1回×3ヶ月
目次
来院までの経緯
患者様が「脳梗塞」を発症されたのは、当院へ来院される約1年前のことでした。
ご自宅でご家族と朝食を取っていた際、突然、左側の顔が下がり、言葉が出にくくなりました。異変に気づいたご家族がすぐに救急車を要請し、病院へ緊急搬送されました。
早期発見により血栓溶解療法を実施
搬送先で検査を受けた結果、「脳梗塞」と診断されました。
発症から早い段階で病院へ搬送されたため、血栓を溶かして血流の再開を目指す「血栓溶解療法」が行われました。その後は、治療後の状態を慎重に確認しながら、経過観察が続けられました。
治療後、左手足には運動麻痺が残りました。ある程度動かすことはできましたが、日常生活で十分に使えるほどの動きではありませんでした。
また、言葉は聞き取れる程度まで回復したものの話しにくさが残り、顔面にも左側がわずかに下がって見える程度の麻痺が認められました。
約4か月間の入院とリハビリを経て自宅へ
発症後は、全身状態を安定させるため、急性期病院に約1か月入院しました。
その後、自宅での生活に戻ることを目標に、回復期病院へ転院。約3か月間にわたり、歩行や日常生活動作を中心としたリハビリに取り組み、退院されました。
継続的なリハビリによって、一人で歩ける状態まで回復されます。
歩行速度が日常生活の課題に
一人で歩けるようになった一方で、歩行速度には課題が残っていました。
特に困っていたのが、トイレへ向かう際に時間がかかり、間に合わないことがある点でした。ご本人は、日常生活をより自立して送るためには歩く速度を上げる必要があり、そのためにも麻痺した足の動きを少しでも高めたいと考えるようになりました。
「今よりも速く、安定して歩けるようになりたい」
その思いから、脳梗塞後の麻痺に対して検討できる治療法を探していたところ、脳卒中(脳梗塞)の後遺症に対する治療の新たな選択肢として「再生医療」を知ることにあります。そのような経緯から詳しい説明を聞くため、当院のカウンセリングへ来院されました。

医師からのコメント
患者様は、一人で歩ける状態まで回復していましたが、歩行速度が十分ではなく、トイレまでの移動に時間がかかることを悩まれていました。そのため、歩行スピードの向上を目的に当院を受診されました。
治療とリハビリでは、まず「トイレに間に合う速度で安全に歩けるようになること」を最初の目標に設定しました。
そのうえで、次の段階として、一人で屋外を散歩できる状態を目指し、坂道や段差でも安定して歩けるようになることを目標としました。
治療方針としては、脳梗塞後の後遺症に対する治療選択肢の一つとして、「自己脂肪由来幹細胞」を用いた再生医療をご提案しました。あわせて、歩行速度やバランス能力、坂道・段差への対応力を高めるためのリハビリを組み合わせ、日常生活の自立度向上を目指す方針としました。
また、脳梗塞の再発予防については、血圧や生活習慣、服薬状況などを確認しながら、主治医による継続的な管理が重要であることもお伝えしました。

看護師からのコメント
来院時、S.H様は杖を使用し、ご家族の介助を受けながら歩いて来院されました。
食事にはやや時間がかかるものの、ご自身で食べることができ、咀嚼にも大きな問題はなかったため、普通食を召し上がっていました。
一方で、歩行速度が十分ではなく、トイレまでの移動に間に合わない可能性があったことから、来院時にはリハビリパンツを使用されていました。排泄に関する不安を強く感じておられたため、治療のタイミングを見ながら、無理のない範囲で体調やトイレの希望をこまめに確認するよう心がけました。
全身状態は安定していましたが、治療中の変化を見逃さないよう、血圧や脈拍、体温、酸素飽和度などのバイタルサインを随時確認し、安全に配慮しながら対応しました。

リハビリの内容
S.H様の歩行スピードを高めるため、まず現在の運動機能や歩行時の動作を詳しく評価しました。
評価の結果、歩く速さを上げるためには、次の2つの課題に取り組む必要があると判断しました。
- 麻痺側の足を、より速く前へ出せるようになる
- 歩行時に腕をしっかり振れるようになる
麻痺側の足を前へ出すための訓練
S.H様は、麻痺側の足を前へ運ぶ動きがゆっくりであることが、歩行速度を上げにくい要因の一つとなっていました。
そこで、足を前へ出す際に使う筋肉を中心に、筋力トレーニングを実施しました。あわせて、足を持ち上げて前方へ運ぶ動作を繰り返し練習し、よりスムーズに一歩を踏み出せる状態を目指しました。
腕を振って歩くための訓練
歩行時の腕振りは、身体のバランスを保ち、足の運びを助ける役割があります。
そのため、肩関節の動きを高める練習を行い、歩行に合わせて腕を前後へ振れるよう訓練しました。下肢の動きと腕振りを連動させながら、安定した歩行と歩行速度の向上を目指しました。

まとめ・「トイレに間に合うようになりたい」脳梗塞後の歩行改善を目指した再生医療
S.H様は、これまでに2回の幹細胞投与を受け、約2か月間リハビリを継続されています。
治療開始前と比べて歩行スピードや下肢の筋力に変化がみられ、トイレまでの移動も以前よりスムーズになってきました。一方で、現在も週に1回ほど間に合わないことがあるため、日常生活上の課題がすべて解消されたわけではありません。
今後も、麻痺側の足を素早く前へ出す動作や、安定した歩行につながる筋力・バランス能力をさらに高めるため、状態に合わせたリハビリを継続していく予定です。
S.H様が「いつでも安心してトイレへ行ける」という目標に近づけるよう、当院では今後も身体機能や生活状況を確認しながら、継続的にサポートしてまいります。