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脳卒中などの後遺症「痙縮(けいしゅく)」とは?~症状と対策~

脳出血

脳卒中などの後遺症として生じる“痙縮(けいしゅく)”という症状をご存知でしょうか。

痙縮は、脳卒中をはじめとする脳や脊髄の障害によって生じることがあり、日常生活や歩行、着替え、入浴などの動作に影響することがあります。

厚生労働省の患者調査結果によると、慢性期の脳卒中患者様は約134万人にのぼり、
国内には約55万人の“脳卒中後の痙縮患者様”が存在すると推定されています。

日々の生活に大きな影響を与える痙縮の悩みについて、この記事では症状の正しい理解と、和らげるための具体的な対策を解説します。


脳卒中・脳血管障害の後遺症に対する再生医療について

痙縮(けいしゅく)(spasticity)とは?

痙縮とは一言でいうと、「脳や脊髄の損傷により、筋肉が過剰に緊張し続ける状態」を指します。

医学的な定義としては、少し難しい表現にはなりますが
“腱反射亢進を伴った緊張性伸張反射(筋緊張)の速度依存性増加を特徴とする運動障害で、伸張反射の亢進の結果生じる上位運動ニューロン症候群の一徴候。”
と定義されています。

つまり、
「脳や脊髄からの指令がうまく伝わらなくなり、手足の筋肉が勝手に突っ張って硬くなってしまう状態」
のことです。

これは、筋肉自体の異常ではなく、運動を司る神経系の障害が原因です。

そして、痙縮は“伸ばされる速度が速いほど筋肉の抵抗が強くなる”という
速度依存性の筋緊張亢進を特徴とします。

例えば、肘をゆっくり伸ばした時よりも、素早く伸ばそうとしたときに
「グッ」と強く抵抗を感じる場合、痙縮が関係している可能性があります。

これは単純に“筋肉が硬くなった”ということではありません。

脳卒中などにより神経系の働きが変化することで筋肉の活動を適切に調節(筋肉を緩める信号がうまく届かず、コントロールが上手にできなくなること)することが難しくなり、“手足が勝手に曲がる”“伸ばしても伸ばせない”といった症状が起こります。

痙縮は、脳卒中のほかにも

  • 脳性麻痺
  • 頭部外傷
  • 脊髄損傷
  • 多発性硬化症
  • 一部神経変性疾患

など脳や脊髄に障害が生じる様々な疾患でみられます。

「拘縮(こうしゅく)」との違いは?

痙縮とよく似た言葉に、「拘縮」がありますが、症状には大きな違いがあります。

・痙縮(けいしゅく):筋肉の緊張が過剰になり、意思に反して勝手に動いたり、突っ張ったりする状態

・拘縮(こうしゅく):関節そのものが硬くなり、動かせなくなってしまった状態

です。詳しくいうと、

拘縮は、筋肉や腱、関節包などの軟部組織が短縮・硬化し、関節の動く範囲が制限させた状態です。例えば、長期間身体を動かさないことで関節が徐々に動かしにくくなることがあります。

実際には、脳卒中後の患者様では痙縮と拘縮が同時に存在することもあり、どちらが動かしにくさの原因となっているのかを評価することが重要です。

なぜ痙縮をコントロールする必要があるのか?

痙縮があるからといって、必ずしも“悪いもの”とは限りません。筋緊張があることで、立位や歩行などの動作を支えている場合もあります。
※これは人それぞれであるため、一概に言えません。

そのため、痙縮を“完全になくす”ことだけが目標ではありません。

痙縮コントロールの最大の目的・大切なことは、生活の質(QOL)を維持・向上し、少しでも動かしやすい身体を作る事です。

しかし、異常な痙縮は日常生活の中で問題になることも多く、痙縮を放置してしまうと、以下のように悪循環に陥り、徐々に身体機能が低下してしまいます。

  1. 運動麻痺や痙縮により身体を動かさなくなる
  2. 関節が固まり、動作が困難になる(拘縮発生)
  3. 筋肉の緊張がさらに強くなり痛みに繋がる
  4. 関節の変形など二次的な障害が進行し、最終的に生活動作が妨げられる

この悪循環を防ぐには、完璧を求めるのではなく、「少しでもできることを増やすこと」がなにより大切です。

痙縮のコントロールには、リハビリテーションは欠かせません。

リハビリテーション

筋肉の過緊張を和らげ、動きやすさを取り戻すための具体的なアプローチを5つご紹介します。

①関節可動域訓練・ストレッチ

関節を動かすことで、関節可動域を維持し、筋肉や軟部組織の柔軟性低下を防ぐことを目的とします。

ストレッチには、毎日の継続が欠かせません。

【ストレッチのポイント】

  • 反動をつけず、ゆっくりと動かす
  • 痛みのない範囲で徐々に動かす
  • なるべく1つの関節ずつ丁寧に動かす
  • 専門職(理学療法士・作業療法士など)によるフォーム指導を受けた上で実施する

特に、痙縮が強い場合は無理に伸ばすことで痛みや筋緊張が強くなることもあります。

とにかく伸ばすのではなく、身体の状態に合わせた方法を選ぶことが重要です。

②課題指向型訓練

日常生活の動作に直結する具体的な動作訓練を継続して行い、実用的な身体の使い方を学習します。

例えば

  • コップを持つ
  • ボタンを留める
  • 立ち上がる
  • ベッドから車いすへ移る
  • 階段を上る
  • 浴槽への跨ぎ動作

など。実際の生活で必要となる動作を繰り返し練習します。

単純に筋肉を動かすのではなく、“実際に使える動き”に繋げることが重要です。

ここで、ポイントが日常生活をリハビリと思って過ごすことです。普段は楽なように、簡単にできるように健側を使って行っていた動作を、麻痺側を使って行ってみることがリハビリの第一歩です。

例えば、

  • ドアノブを開けるときいつもは健側を使って行っていたことを、麻痺側でドアノブを掴んで押して(引いて)みる
  • ペットボトルのキャップを開ける際、足に挟んで健側で開けていたものを、麻痺側で掴んでキャップを開けてみる
  • 髪の毛をとく際、健側ではなく麻痺側でブラシを持ってやってみる

など普段何気なく行っている動作を少し時間をかけて、ちょっとしたリハビリの一環と思って行ってみてください。

むやみやたらに行って、手足を痛めたり、怪我をしたりしないように、自分のレベルに合ったものを選択することが必須です。
自分で判断がつかない場合は、通っている専門職に相談してみてください。

③装具療法

姿勢や歩行の安定性を保つためには、装具による身体のサポートが非常に効果的です。

「装具に頼ると筋力がそれ以上つかないのでは?」と心配される方もいらっしゃいます。

しかし、装具の目的は「身体を楽にすること」だけではありません。

安全面が確保されていない環境で無理に動くと、変な癖(代償動作)がつき、二次的障害を引き起こす恐れがあります。
まずは安全面を第一に考え、正しい姿勢で“できること”を行うことが大切です。

装具を使用するかどうか、どのような装具が適しているかは、筋肉や痙縮、歩行能力などを評価したうえで専門職と相談して決めることが大切です。

④物理療法

痙縮を一時的に緩和するために、物理的な刺激を活用する方法もあります。

・振動刺激:過剰な筋肉の緊張を抑制する

・温熱療法:血流を促進し、筋肉の柔軟性を高める

※適応や効果には個人差があるため、必ず専門職に相談しながら行いましょう。

⑤医療的アプローチ

医療的な治療を組み合わせることも有効な選択肢です。

〇ボツリヌス療法

痙縮の原因となっている筋肉にボツリヌストキシン(ボツリヌス菌が作り出す天然のたんぱく質)製剤を注射し、神経から筋肉への信号を抑えることで、過剰な筋緊張を一定期間和らげる治療です。

治療によって筋肉が動かしやすくなった状態で、ストレッチや運動療法、実際の動作練習などを行うことで、日常生活での動きに繋げていくことが大切です。

〇内服薬

痙縮に対して筋緊張を抑える目的で内服薬が使用されることもあります。

ただし、薬の種類によっては眠気や筋力低下などの副作用が生じることもあるため、生活への影響を考慮しながら医師と相談して使用します。

注意点

内服薬や注射などの外科的治療は、あくまで“その時の筋緊張を抑制する”ものであり、それだけで手足が自由に使えるようになるわけではありません。
治療の効果を最大限に引き出し、実際の動作へ繋げるためには、必ずリハビリとの併用が必要不可欠です。

自主訓練は“毎日継続すること”がもっとも大切です。
ある1日だけすごく頑張って残りの日は何もしない、というやり方では、身体の学習が定着しません。

毎日少しでも身体を動かし、継続することが自分自身への振り返りとなり、確かな改善(学習)へと繋がっていきます。
焦らず、ご自身のペースでコントロールを続けていきましょう。

まとめ

脳卒中後の身体変化は、一日で大きく改善するものではありません。

だからこそ、無理なく継続できる運動や自主訓練を日常生活に取り入れることが大切です。

ただし、“毎日必頑張らなければならない”ということではありません。

疲労、痛み、体調などによって運動量は異なります。

「今の自分の身体でできることを少しずつ増やしていく」

その積み重ねが、身体を動かす機会を増やし、日常生活の質を高めることに繋がります。

痙縮による“ツッパリ”や“動かしにくさ”が気になる場合は、一人で悩まず、医師や専門家に相談してみましょう。

症状の原因を正しく評価し、その方に合った治療やリハビリテーションを選択することが、よりよい生活に繋がる第一歩です。

 

監修:医療法人香華会リボーンクリニック本院

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