コラム

COLUMN

脳卒中後のリハビリはどう進む?各段階の目的と“再生医療”という新たな選択肢

脳出血

脳梗塞や脳出血などの脳卒中を発症すると、
身体の麻痺や歩行障害、言葉の障害、飲み込みの障害など、様々な症状が現れることがあります。

その症状を改善させ、また新たに生活を始めるためにもリハビリテーションは重要となっていきます。

脳卒中後のリハビリテーションは、
発症直後から退院後の生活まで、時期により目的や内容は大きく変化します。

また、日本では、医療保険・介護保険など制限の中でリハビリテーションは提供されており、
保険診療として算定できる期間や利用できるサービスには一定の決まりがあります。

この記事では、脳卒中後のリハビリテーションについて説明します。

脳卒中、脳血管障害、後遺症対策セミナー

リハビリテーションとは

リハビリテーションというと、“歩く練習”や“筋力トレーニング”がイメージされやすいです。
しかし、リハビリテーションの目的はそれだけではありません。

脳卒中により

  • 手足が動かしにくい
  • 立つ・歩くことが難しい
  • 着替えやトイレに時間がかかる
  • 言葉が出にくい
  • 食事や飲み込みにくさがある
  • 注意力や記憶力が低下する

などの問題が生じた場合に、
その人自身ができることを増やし、生活を再び取り戻していくことがリハビリテーションの大きな役割です。

そのため、リハビリテーションでは単に“筋肉を鍛える”だけではありません。

最終的な目標をもって、自宅復帰・社会復帰を目指し、その人がその人らしく生活できるために、サポートをしていきます。

理学療法士・作業療法士・言語療法士の役割

脳卒中後のリハビリテーションでは、複数の専門職が関わります。

理学療法士(PT:physical therapist)

主に

  • 寝返り
  • 起き上がり
  • 立ち上がり
  • 立位
  • 座位
  • 歩行
  • バランス機能
  • 筋力
  • 関節の動き

など基本動作や移動能力の改善を目指します。

作業療法士(OT:occupational tyerapist)

主に

  • 着替え
  • 食事
  • トイレ動作
  • 入浴
  • 手の細かな作業
  • 上肢機能
  • 高次脳機能
  • 家事

など日常生活に必要な動作の獲得を目指します。

言語聴覚士(ST:speech-language hearing tyerapist)

主に

  • 言葉を話す
  • 言葉を理解する
  • 読む・書く
  • コミュニケーション
  • 嚥下機能

などの改善を目指します。

つまり、
一人の患者様をそれぞれの専門分野から支えるチーム医療が脳卒中リハビリテーションの特徴です。

脳卒中後のリハビリテーション

脳卒中後のリハビリテーションは大きく、急性期→回復期→生活期(維持期)という流れで考えます。

※これはあくまでも一般的な流れで患者様の症状や身体機能、生活状況により異なります。

急性期リハビリテーション

急性期とは脳卒中を発症した直後から、病状が安定していくまでの時期です。

この時期の大きな目的は、
廃用症候群や合併症を防ぎ、できるだけ早く安全に身体を動かしていくことです。

脳卒中治療では、麻痺の改善や今後の生活に復帰するためにも、
病態や全身状態を確認しながら早期からリハビリを開始することが重要です。
急性期では、座位・立位・歩行などの離床に向けた練習だけでなく、早期自立や廃用・合併症予防も重要となります。

主なリハビリテーション

  • ベッド上での手足の運動
  • 寝返り・起き上がり・立ち上がり
  • 座位練習
  • 立位練習
  • 移乗動作練習
  • 歩行訓練
  • 食事・トイレなどのセルフケア
  • 呼吸・循環状態を考慮した離床

などを患者様の状態に合わせて行います。

また、肺炎、尿路感染症、深部静脈血栓症などの合併症や、
関節拘縮、筋委縮、体力低下などの二次的な障害を防ぐことも大切です。

さらに、突然の脳卒中によって不安を抱える患者様やご家族様に対して、
病気や障害について理解していただき、今後のリハビリや退院までの流れを共有していきます。

廃用症候群とは?

厚生労働省では、
廃用症候群を「生活が不活発」なことによって生じる、全身のあらゆる機能の低下(身体の不活動状態により生じる三次的障害)
と定義しています。

つまり、病気やケガにより長期間身体を動かさないで

  • 筋力低下
  • 関節拘縮
  • 体力低下
  • 心肺機能低下
  • 基本動作能力、日常生活動動作能力の低下

など、様々な身体機能の低下が起こる状態です。

そのため、安静にして治療するだけでなく、
安全を確認しながらできるだけ早く身体を動かすことが重要になります。

回復期リハビリテーション

回復期とはできることを増やし、生活に戻るための時期です。

病状が安定すると、より集中的なリハビリテーションを行うため、
回復期リハビリテーション病棟などへ移ることがあります。

残された身体機能を最大限に引き出し、日常生活動作(ADL)を改善することが大きな目標とし、
実際の生活に繋がる能力を獲得することを目指します。

主なリハビリテーション

  • 歩行訓練
  • 階段昇降
  • バランス訓練
  • 筋力トレーニング
  • 上肢・手の機能訓練
  • 日常生活動作訓練
  • 装具を使用した歩行訓練
  • 電気刺激療法
  • ロボット使用した訓練
  • 必要に応じた福祉用具の検討
  • 自宅環境の確認
  • 家族様への介助方法指導

など、その人に必要な内容を組み合わせて行います。

近年の脳卒中治療ガイドラインでは、歩行訓練や下肢筋力増強訓練などに加えて、
ロボットやVRを使用したリハビリテーションについてもエビデンスが整理されています。

生活期リハビリテーション

生活期とはできるようになったことを実際の生活で使う時期です。

退院した後は、生活期のリハビリテーションへ移行します。

ここで大切なのは、“機能を維持するだけ”ではありません。

残された機能を活用しながら、歩く・外出する・仕事する・趣味を楽しむなど
その人らしい生活を実現することが重要
となります。

脳卒中治療ガイドラインでも、
生活期において歩行訓練や下肢筋力増強訓練などを継続するこが望ましいとされています。

主なリハビリテーション

  • 歩行能力の維持・改善
  • 筋力・体力の向上
  • バランス練習
  • 日常生活動作訓練
  • 屋外歩行
  • 外出・社会参加に向けたトレーニング
  • 再発予防のための練習
  • 自宅で行う運動指導

などがあります。

リハビリテーションには期限がある

ここは非常に重要なポイントです。

日本の医療保険では、脳血管疾患等リハビリテーションについて、発症・手術日などからの“標準的算定日数”が提示されています。

入院中のリハビリテーション時間

1日あたりのリハビリ時間

医療保険でのリハビリは“1単位=20分”として計算されます。

〇原則の目安:1日最大6単位(120分)まで
〇特定の条件を満たす場合:1日最大9単位(180分)まで

※注意点
上記はあくまで算定できる“最大の時間”です。
実際に毎日何分リハビリできるかは、患者様の状態や医療機関の体制などによって異なります。

リハビリを受けられる期間

発症からの日数や、入院している病院の段階(急性期か回復期か)によって、
保険でリハビリを受けられる日数に上限が定められています。

〇急性期病院・退院後の外来リハビリ:発症から最大180日
〇回復期リハビリテーション:一般的な脳血管疾患最大150日、重症脳血管障害など最大180日

※注意点
これらは制度上で定められた最大の期間です。
「必ずこの日数まで入院してリハビリができる」というわけではなく、
ご本人の回復状況や退院後の生活環境などを総合的に考慮して、退院や転院の時期が検討されます。

また、上記期間は設けられていますが、
180日超えると強制リハビリ終了ではなく、月13単位までなど制限がかかります。

退院後もリハビリテーションを続けるには?

退院後もリハビリテーションが必要な場合、介護保険によるリハビリテーションが選択肢となります。

サービスを利用したい場合は、各自治体の窓口に申請を行い、
介護認定を受ける必要があります。

代表的なものが、訪問リハビリテーション通所リハビリテーション(デイケア)です。

訪問リハビリテーションとは、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などが自宅訪問しリハビリを実施します。

自宅内で行える実際の生活環境に合わせたリハビリや、その他困っていることへの対処法相談など行います。通院することが難しい方が主な対象者となっています。

通所リハビリテーションとは、施設へ通ってリハビリテーションを受けるサービスです。

送迎を利用できる場合もあり、
施設ではリハビリテーション以外にもサービス内容に応じて、食事、入浴、レクリエーション等が含まれます。

利用時間や回数は、サービスの種類や介護度、ケアプランなどによって異なまります。

医療保険と介護保険は同時に使える?

ここは少し複雑となります。

原則として、
同じ疾患に対する医療保険の疾患別リハビリテーションと介護保険のリハビリテーションを自由に重複して利用できるわけではありません

ただし、医療保険から介護保険への移行を円滑にするために、
一定の条件下では一定期間の併用が認められています。
例えば、別施設へ移動する場合には、介護保険リハビリの利用開始月を含む翌々月まで一定の併用が可能です。

実際の利用については、主治医やケアマネジャー、リハビリスタッフなどに相談し、
現在の状態にあった制度を選択することが大切です。

保険のリハビリが終わったらもうリハビリできない?

ここは、脳卒中の患者様にぜひ知っていただきいポイントです。

保険制度には、リハビリテーションを算定できる期間や利用できるサービスに一定のルールがあります。

しかし“保険でのリハビリが終了=身体機能の改善が終了”という意味ではありません。

生活期でも、歩行訓練や筋力トレーニングなどによって、歩行能力や日常生活動作の改善を目指すことができます。

そのため、「もう発症して何年も経っているから、リハビリしても意味がない」とは一概に言えません。

保険外(自費)リハビリテーションという選択肢

医療保険・介護保険によるリハビリテーションには、
利用期間や回数などの制度的な縛りがどうしても存在します。

一方、全額負担となる“自費リハビリテーション”であれば、そうした公的な枠組みにとらわれる心配がありません。一切の制限がないため、患者様一人一人の目標やペースに徹底的に寄り添った、より柔軟で最適なリハビリプログラムをご提供できるのが大きな強みです。

当院でできるリハビリテーション

当院の最大の特徴は、
再生医療とリハビリテーションを組み合わせることで得られる「相乗効果」です。

リハビリテーションの本来の目的は「神経の再学習」にあります。神経に対するリハビリで特に重要となるのは以下の2点です。

・正しい神経のルートを反復して使うこと
・間違った身体の使い方(代償動作)を減らすこと

例えば、手の動きを取り戻すためには、
「脳から脊髄、そして筋肉へ」という神経の伝達ルートを正しく作り直す必要があります。
そのため当院では、以下のようなアプローチを組み合わせて、神経レベルでの回復をサポートしています。

〇神経の働きを活発にする 「電気刺激療法」
〇正しい動きを反復する 「促通反復療法」
〇筋肉の過剰な緊張を和らげる 「振動刺激痙縮抑制法」 などの手法

もちろん、実際の生活を想定した動作訓練(課題指向型リハビリ)も大切です。
しかし、神経の回復が不十分な時期に無理な自己流トレーニングをしてしまうと、
誤った神経回路が定着してしまい、かえって回復の妨げになる恐れがあります。
そのため、適切なタイミングを見極めて訓練を行うことが不可欠です。

再生した神経は、正しく使うことでその回路が強固になり、定着していきます。
つまりリハビリは、脳に対して「正しい回路の使い方」を教え込む重要なプロセスなのです。

再生医療とリハビリは、それぞれ単体でも効果が見込めますが、両者を掛け合わせることでさらなる効果を発揮します。

  • 再生医療: 神経が回復しやすい土台(環境)を作る

  • リハビリテーション: その整った環境に、適切な刺激を与える

この2つのサイクルにより、効率よく神経回路を再構築し、機能の回復を目指します。

脳血管障害の再生医療について

まとめ

脳卒中後のリハビリテーションは、発症直後から退院後まで目的を変えながら続いていきます。

そして、リハビリテーションには医療保険・介護保険などの制度上のルールがあります。

180日経過したらリハビリ終了ではありません。保険制度上の算定期間と、身体機能が改善する可能性がある期間は同じではないからです。

脳卒中後の身体機能や生活上の目標は、一人一人異なります。だらかこそ、現在の状態を適切に評価し、“今の自分に必要なリハビリは何なのか”を考えることが大切です。

 

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