症例紹介

CASE

「もう一度ホノルルマラソンに出場したい」、その夢を叶えた一人の女性とクリニックの二人三脚の物語

専門知識 2023/02/09

疾患名:脳血管障害
イニシャル:H.M
性別・年齢:24歳 女性
症状:脳血管障害の後遺症
:左手足の運動麻痺、感覚障害
脂肪由来幹細胞治療:6回
リハビリ:週5回×3ヶ月、週2回×15カ月 現在も継続中

<来院までの経緯>

 約8年前の高校生の時、普段通り生活をしているところ、急に頭痛が発生。その10分後には意識を失い、近くにいたお姉様とご友人の方がすぐに救急車を呼び、そこから彼女の壮絶な物語が始まりました。
 救急搬送後、画像診断により動脈や静脈の形が正常とは異なっており、放置すると出血のリスクが高くなる”脳動静脈奇形”という診断をされました。奇形の部分は非常に出血のリスクの高く、H.M様は右脳血管の奇形部分が破裂し、脳出血という脳血管障害であることが判明したのです。すぐに手術をしないと命の危険がある状態でした。その手術は頭蓋骨の一部を一旦取り除くという大掛かりな手術でした。意識は徐々に回復したものの、脳血管障害の後遺症を患い、左手足が全く動かない為、起き上がることもできない、座ることもできない状態でした。数週間後、再検査を行うと未だ脳動静脈奇形は残っていることが判明。再手術が決まり、同時に外した頭蓋骨を再度形成する手術を行う事も決まった。手術は無事に終了。1か月後の検査では脳動静脈奇形はなく、一安心しリハビリに専念するため、リハビリ目的で転院となりました。
 しかし、今度は手術の痕が化膿していることが判明。一度目の手術の時に切り取った頭蓋骨を再度除去する手術、その後は人工の骨で頭蓋骨を形成する手術の計2回をもう一度受けなければならなくなったのです。
 4回に渡る壮絶は、無事に成功し、彼女のたゆまぬ努力の結果、当初は一人の力では起き上がれない状態から、一人で杖と装具を使用して歩いて生活できるまで回復することができ、無事退院となりました。

 退院に喜びを感じる反面、脳血管障害後遺症の改善を目的として、保険内で受けられるリハビリには時間の短さや回数などの限りがあり、入院中と比べると高頻度・長時間では受けられなくなってしまいました。外来でのリハビリ直後は体が動きやすくなっても、次の日にはまた動きにくくなる状態を繰り返していたそうです。
「もうこれ以上回復できないのかな?」
「一生この体のまま生活していかなければいけないのかな?」
そういった不安を感じていらっしゃったH.M様。何とかして「もう一度ホノルルマラソンに出場したい」、その為に他に治療方法はないのか、そう考えながら治療方法をインターネットで検索していたところ、脳血管障害の後遺症に対して治療ができる再生医療に辿り着きました。再生医療なら根治を目指せるのではないか、もう一度走れるようになるのではないかと希望を抱き、当院へカウンセリングを受けに来院されました。

<医師からのコメント>

H.M様のご希望としては、ホノルルマラソンに出場するということでした。そのためホノルルマラソン出場を治療の最終目標に設定しました。初診時、装具と杖を使用して一人で歩ける状態でしたが、走行では麻痺側の足がうまく前に出せず、躓き転倒してしまう危険性があることから介助者が必要であり、走るイメージも湧かないという状態でした。ホノルルマラソン出場の為にはもちろん走れるようになる必要があります。もう一度走れるようになるために、脳血管障害後遺症の改善を目的に自己治癒能力を最大限に高める脂肪由来幹細胞治療とリハビリを勧めております。

H.M様が走ろうとしたときの具体的なお悩みとしましては、
・歩くときでも、足が真っすぐ前に出ない。
・走ろうとすると麻痺側の足がうまく上がらず、地面に爪先が引っ掛かってしまう
・走るイメージが湧かず、スピードが出せない
この3つが挙げられました。

<リハビリ>

 リハビリの方では、どうすれば走れるようになるのかを分析するために、現在H.M様の運動機能・動作能力の評価を行いました。
評価を行った結果、
① 麻痺していない側の足のバランス能力向上
② 麻痺側の足を素早く前に出せるようにする
③ 軽くでもジャンプができるようになり、ポーンポーンと弾む感覚を学習する
上記3つを目標に、①では麻痺していない側の足でのバランス強化訓練を実施しました。②は足を速く前に出すために瞬発的に筋肉を動かしたり、余計な力を使わずに動かす練習を実施しました。③は弾む際の着地の仕方、体重の受け止め方の練習を行いました。このようなリハビリ内容を、週5回を3ヶ月、週2回を15カ月間実施しました。

<締め>

 幹細胞投与6回終了、リハビリは約1年半が経過。目標だったホノルルマラソン10kmの部に出場が決まり、2時間11分で完走。付き添いの方と共に出場され、介助はなく全てご自身の力で完走したとスタッフへ報告を頂けました。リハビリからは関節保護の目的で杖や装具は使用したままでの出場を今回は勧めております。完走は果たしましたが、まだまだ納得のいくタイムや走り方ではなく、これからもさらなる能力の向上の為、リハビリを継続されるそうです。幹細胞投与6回は終了しましたが、脳血管障害の後遺症に対する治療の効果を実感されており、タイミングを見て、追加の投与も検討されております。これからまだまだ長い人生を、当院スタッフ全員で伴走して参りたいと思います。

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