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【再生医療レポート】コロナ禍の中で注目を集めている「NK細胞療法」について ~ワクチン、アビガン、レムデシビルなどとの違いとは~

専門知識 2020/05/25
世界中が新型コロナウイルスの脅威に晒される中、免疫力、集団免疫など、ニュースや紙面などで「免疫」というキーワードが多く取り沙汰されるようになりました。

そして、「重篤化するかどうか」を左右するひとつの要素と考えられているこの「免疫」に関連して、再生医療の分野における「NK細胞療法」という治療法がひそかに注目を集めています。

今回「医学的に免疫力を向上させる」というこの治療法について、再生医療を手掛ける朱セルクリニック院長の山口先生にお話を伺いました。

(※緊急事態宣言発令中のため、オンライン取材となります。)

 

免疫力を高める「NK細胞療法」

──山口先生、本日はよろしくお願い致します。まずは簡単に略歴などをお聞かせいただけますでしょうか?

 

山口医師:はじめまして。朱セルクリニック院長、再生医療医の山口と申します。
 
簡単に経歴を申し上げますと、東邦大学医学部を卒業後、同大学病院にて内科、内分泌、糖尿病などを扱う第二内科という所に所属しており、同大学の第二整形外科では、関節、中でも変形性関節症に関する症例を多く扱ってきました。

また、同大学のICU(救命救急センター)にも2年ほど勤めておりました。
 

再生医療に関しては、再生医療法等ができる前からなので、かれこれ15年ほど扱っています。

内科分野においても整形外科分野においても、現行の再生医療のベースになるような治療を、それらが「再生医療」と呼ばれるようになる前から扱っております。

現在は朱セルクリニックにて、現場で再生医療医として治療を行なっています。

 

 

──ありがとうございます。山口先生が院長をつとめられている朱セルクリニックでは、この度のコロナショックを受け、「NK細胞療法」という治療法の周知に力を入れていくそうですが、これはどういった経緯からでしょうか?

 

山口医師:背景としては、この恐ろしいウイルスの流行によって「免疫」というキーワードが改めて注目され、再生医療分野における免疫療法、中でも今回お話しさせていただく「NK細胞療法」に関する当院へのお問い合わせが非常に増えたということが大きいです。
 

世界的にも未だ特効薬と呼べるものがないという状況の中で、高齢者や既往症のある方々、つまり「免疫力が低下している」方々の死亡率・重篤化率が極めて高い。
 
「では免疫力を高めるには具体的にどうすればいいのか」ということを詳しく調べられた方が、こうした予防法にたどり着いているのかなと思います。

免疫 =「体内に侵入した毒素や病原菌に抵抗し、打ち勝つ能力」

──なるほど。「免疫」という言葉自体は一般的にも使われるものかと思いますが、そのメカニズムなどについては知らない方も多いのではないかと思います。前提情報として、このあたりのお話をお聞かせいただけますでしょうか?

 

山口医師:免疫とは、辞書的な意味から言えば「体内に侵入した毒素や病原菌に抵抗し、打ち勝つ能力」のことを指します。
 

例えば風邪などでも、「薬を飲まなくても治る」ということがありますよね。新型コロナウイルスについても8割の方は軽症、つまり入院などをすることなく、下手をすれば感染していることにも気がつかないうちに治ってしまうこともあると言われています。
 

これは薬などの作用に頼ることなく、人間の体に備わっている免疫という力が、侵入したウイルスを退治しているからです。
 

もう少し詳しくお話しすると、まず、免疫には「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類があります(図1)。今回お話しさせていただく「NK細胞」は、「自然免疫」の方に含まれます。「獲得免疫」には、T細胞やB細胞といったリンパ球が含まれます。

 

【図1】自然免疫と獲得免疫 イメージ

 

山口医師:次に「自然免疫」と「獲得免疫」の違いなんですが、「自然免疫」は絶えず私たちの体の中をパトロールしており、異物の侵入や細胞の異常を、すなわちウイルスやガン細胞を認識したときには攻撃をして退治する、そういったものです。
 

「獲得免疫」については、ある一定の情報、つまり抗原(敵)の情報を細胞に与えてあげることで、特異的に異物を攻撃させる、というものになります。
 

ワクチンなどはこうした働きを利用したものですね。
 

弱毒化したウイルスを体内に投与し、その情報をヘルパーT細胞を渡してあげることで、投与されたウイルスに対する抗体を体内で産生するということです。「特異的に」というのはそういった意味になります。

 

免疫の実際数を増やす「NK細胞療法」

──「NK細胞」は「自然免疫」に含まれるとのことですが、この細胞を使った治療法というのはどのようなものであり、どういったケースで行われていることが多いのでしょうか?

 

山口医師:「NK細胞療法」は「再生医療」における治療法のひとつになるのですが、この「再生医療」というものを概念的にご説明すると、「自分の身体から取り出した組織や細胞を使い、機能しなくなった臓器・組織の回復を行う治療法」のことを指します。
 

厚生労働省はこの「再生医療」について、施術に対するリスクの高い順に第一種、第二種、第三種と分類を行っているのですが、「NK細胞療法」は最もリスクの低い第三種にあたります。
 

「取り出し、手を加え、戻す」という「再生医療」の概念に照らせば、「NK細胞療法」という治療法もわかりやすいかと思います。
 

自分の血液を採取し、そこからNK細胞を抽出、これらを培養して増やし、点滴で元の体に戻す、というものになります。

 

元々、自然免疫を担う細胞の数というのは年齢的には15歳くらいがピークで、以降は加齢と共に数が減少していきます。
 

「免疫力が重要である」とよく耳にするかと思いますが、それを測るひとつの基準がこの「NK細胞」の数になります。NK細胞療法は、その実際数を増やすための治療というわけです。
 

「NK細胞療法」が行われるケースについて、今現在はガンの予防・治療で行われていることが多いという認識ですね。
 

「NK細胞」の数を増やし、自然免疫力を高めることで、ガン細胞を退治しようということです。新型コロナウイルスに関して期待されている効果も同様です。

 

NK細胞治療は「ワクチン」「アビガン」「レムデシビル」と何が違う?

──なるほど。「元々持っている、異物を攻撃してくれる細胞の数を増やす」という予防の主旨を考えると、コロナショックの影響で「NK細胞療法」に関する問い合わせが増えていることも理解できます。現在、「ワクチン」「アビガン」「レムデシビル」といったものによる治療も同様に注目を集めていますが、こうしたものとの違いについてお聞かせいただけますか?

 

山口医師:治療法の比較の前に、「そもそも新型コロナウイルスとはどういった特徴・特性を持っているか」についてお話しさせていただきますね。
 

今回の新型コロナウイルス、COVID-19はコロナウイルスの一種であることには変わりありません。
 

コロナウイルスとは、私たちがいわゆる「風邪」と呼んでいるものですね。
 

普通の風邪の場合だと、喉の粘膜にウイルスが付着して、喉が痛くなったり、鼻水が出たり、咳・くしゃみが出たりといった症状でとどまることが多いのですが、
 

新型コロナウイルスの場合は、「咽頭に付着後、そのまま肺に作用しやすい」という特徴があります。
 

新型コロナウイルスは、肺に侵入すると、酸素と二酸化炭素のガス交換を担っている肺胞という部分に付着し、増殖していきます。肺胞は炎症を起こし(間質性肺炎)、ガス交換がうまくいかなくなります。
 

呼吸が抑制されれば血液中の酸素濃度は低下し、二酸化炭素濃度が上昇しますので、これが進むと意識混濁やケトアシドーシス(血液が酸性に傾いた状態)が起こりやすくなります。
 

多臓器不全や敗血症のリスクが高まるわけですね。これがいわゆる「重篤化」と呼ばれる状態です。さらには、血栓もできやすくなるので、脳梗塞や心筋梗塞なども二次的に引き起こされます。
 

詳しいメカニズムはここでは割愛させていただきますが、簡単にご説明すると、
 

アビガンやレムデシビルといった薬は、前述の流れにおける「ウイルスの増殖」を防ぐためのものになります。
 

肺胞に付着し、自身のコピーを量産しようとするウイルスの活動を阻害することで重篤化を防ごうというわけですね。
 

これに対し、NK細胞や、ワクチンによって得られる抗体の働きは、ウイルスそのものを攻撃・退治するものですから、そうした意味では薬による治療と根本的に異なります(図2)。

 

 

自然免疫と獲得免疫の療法をセットで捉える

──逼迫した状況が続く中、「NK細胞」「NK細胞療法」はどういった部分で期待されているのでしょうか?また、具体的にどういった局面での働きが期待されているのでしょうか?

 

山口医師:働きが期待される局面、「NK細胞」の投与時期という風に言い換えるなら、やはり予防的に投与していくことが最良であると考えています。
 

「免疫力を上げる」という命題について、「これを食べたら免疫力が上がる」「日頃の生活でこれを気を付ける」など風説レベルでは色々あるかもしれませんが、
 

NK細胞療法における「免疫細胞の数を直接的に増やすことができる」という点での確実性は疑う余地がありませんので。
 

アビガンやレムデシビルなどについては先ほどお話ししましたが、重篤化患者にこれらを使用しても救えなかったという例もあります。
 

そして、今回の新型コロナウイルスによる肺炎は無症候性低酸素血症を引き起こす、すなわち自覚症状が少ないまま血中の酸素が減っていくという恐ろしい特徴もあるため、早期に発見して対処、ということもなかなか難しくなる。
 

一旦多臓器不全や敗血症が引き起こされはじめると、手の施しようがなくなってきますので。
 

そうした事情から、ことさらに「予防」という視点は重要になるかと思います。
 

世界的に見れば、「獲得免疫」であるワクチンなども注目を集めていますが、

一度体内でできあがった抗体がどの程度の期間持続するのか、またどの程度の量の抗体ができていればウイルスの増殖を抑えられるのか、こうした部分については未だわかっていないことも多いです。
 

なので新型コロナウイルスを迎え撃つ上では、「NK細胞療法」のような「自然免疫」とワクチンのような「獲得免疫」の両方をセットで捉えることが重要であると考えています。
 

また、重篤化のさらなる要因として「免疫暴走(サイトカインストーム)」というものもあります。
 

これは、インターフェロン、インターロイキンといった細胞間の情報伝達物質(サイトカイン)が、体内のウイルスが増殖するにしたがって大量に放出され、人体に過剰な影響が起きてしまうという状態を指します。
 

要するに、体を守るための「肺に炎症が起きたぞ!」「肺の炎症を抑えろ!」といった命令系統が体の中で多くなりすぎて、全身状態が悪化したり、血栓ができたりということですね。
 

これに関して「自然免疫」と「獲得免疫」を比較したとき、「自然免疫」の方が暴走が起こりにくいということも、期待を集めている部分であるように思います。

新型コロナウイルスに対しては、的確な診療の元に判断を

──なるほど。最後になりますが、「新型コロナウイルスに対し、どういった対応をすべきか」という内容に関して、臨床的見地から総合的なご意見をお聞かせいただけますでしょうか?

 

山口医師:今回、「コロナ禍の中で注目を集めるNK細胞療法」というテーマでお話をさせていただきましたが、こうした治療法そのものだけでなく、抗体チェックなどの検査などを含めて考えることが重要であるというのが当院の見解です。
 

これは「NK細胞」だけではなく「自然免疫」全般に言えることですが、特定の抗原に対して作用する「獲得免疫」と比べると融通が聞くタイプの細胞ではないので、的確な診断の元に行うことが求められます。
 

かといって「考えられうる全ての検査を行う」ということも現実的ではありません。「体内にウイルスがいるかどうか」「感染の兆候が見られるかどうか」の2点を、ポイントで見極めていく必要があります。
 

前者に関しては、最近話題になっているPCR検査などで陽性か陰性かを見極めることが可能です。
 
これだけでは不十分な理由としては、こうした検査にも測定限界値(一定以下のウイルス量では反応しない)があり、感染初期などはとくに精度も100%ではないということが挙げられます。
 

後者に関しては、パルスオキシメーターを使用することで前述の「無症候性低酸素血症の兆候」について、また肺のCTスキャンを行うことで「間質性肺炎の兆候」について一定の判断基準を得ることができます。
 

こうした検査結果を元に、「IgG抗体の数値が上がってきているから、少し様子を見てもいいかもしれない」「感染初期なので、NK細胞の投与が効果を発揮するかもしれない」などの判断を下していくことになります。
 

もちろん、PCRも陰性で、兆候が見られなかったとしても、予防として投与を行うということも全然構いません。
 

NK細胞療法で、今回のような驚異に日頃から備える

山口医師:重篤化する可能性が高いと言われているのは40代以上の方々です。
 

若い時に比べるとそもそも免疫細胞の数が減少していることに加え、糖尿病、高血圧、脳血管障害を患っていたり、膠原病や慢性関節リウマチなどの持病があったりなど、免疫力低下の要因が多い世代です。
 

ステロイドや免疫抑制剤を使用中である、ガンの治療中・治療後である、といったことも要因に含まれます。
 

リスクが高いと言われているこうした世代の方々は、同時に経済を支えている層でもあります。40代、50代はもちろんのこと、60代でもまだまだ働き盛りという方もいらっしゃる。
 

「今回のような脅威に日頃から備えたい」という価値観をお持ちの方も多い中で、「NK細胞療法」を検討される方が増えるのは自然な流れであるように思います。
 

新型コロナウイルスによる肺炎が重篤化し、命を落としてしまう場面。それは意識障害を伴うため、「家族や大切な人に何かを伝える」という機会さえも奪われてしまうケースがあります。
 

また、感染者のうち80%の人が軽症であり、さらにその大部分が自覚すらないことを考えると、その脅威はすぐ隣に潜んでいるかもしれないのです。
 

「一度かかれば大丈夫」と仰る方も時々見かけますが、そんなことは証明されていません。
 

こうしたことを考慮すると、「ライフワークの中での対策」はやはり重要だと考えています。
 

「確実に免疫力を高める手段」として、悪性腫瘍等の予防でご来院いただいている患者様には既に「NK細胞療法」をご提案しておりますが、当院としても今後さらに力を入れていく所存です。
 

世界各地で様々な悲劇を起こしている新型コロナウイルス。未だ治療法の確立されていないこの脅威に対する防衛線のひとつとして、「生来の免疫細胞のひとつであるNK細胞の数を増やす」という選択肢があります。
 

世界的に見ても、「再生医療」というもの自体がまだまだ一般的なものではないというのが現状ですが、こうした新しい医療のことがより広く認知され、より多くの人に届くことを心から祈っています。

 

 

【NK細胞免疫療法のご案内】
 
当クリニックでは、「悪性腫瘍の予防に対する自家NK細胞療法」の届出を行っており、NK細胞による免疫治療が可能です。新型コロナウイルス感染症の拡大により、免疫治療は現在大変注目を浴びている治療法です。免疫力向上に関心をお持ちの方は、特設ページをご覧ください。
 
初診料・血液検査・感染症検査(カウンセリング込み) ¥30,000(税別)
50ml採血によるNK細胞療法1回 ¥350,000 (税別)
⇒上記内容を100名限定150,000円(税別)にてご案内中です。

※新型コロナウイルスの終息宣言などが出た場合、早期に終了することがあります。

→NK細胞療法特設ページを見る

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