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注目のES細胞、iPS細胞とは?再生医療医がわかりやすく解説
今回は、ES細胞とiPS細胞についてご説明します。どちらも幹細胞の仲間で、再生医療には欠かせない重要な細胞です。
実際は、ES細胞とiPS細胞を治療に応用することは様々な課題があるため現段階では難しく限定的な利用にとどまっています。そのため、再生医療クリニックで用いられるのは体性幹細胞という別の種類の幹細胞です。後半では体性幹細胞とES細胞/iPS細胞との比較や体性幹細胞を用いるメリットについてもお話しします。
私は、以前は病理医として日々細胞研究に励んでいました。日本では病理医は人口が少ないので耳なじみがないと思いますが、顕微鏡を通して、1つ1つの細胞にどのような働きがあるのかを研究していく分野です。なので、研究者という立場からもES細胞とiPS細胞という難しいけれど素晴らしい可能性を持つ分野をみなさんに分かりやすくご説明したいと思います。
▼動画でも解説しています。
目次
そもそも幹細胞とは
「多分化能」と「自己複製能」を持つ細胞を幹細胞と言います。
簡単に表現すると、このようになります。
・多分化能=体のいろんな部位に変身できる能力
・自己複製能=無制限に自分を増やすことのできる能力
なので、再生医療では幹細胞を投与することで傷ついた体の部分を修復したり、低下した機能を改善することができます。
例)膝の軟骨がすり減って痛くて歩けない患者様
従来⇒今までは、ヒアルロン酸注射で軟骨の代用をしていました。問題点としては、ヒアルロン酸は時間とともになくなってしまうので注射を継続的に行わなければいけません。重症な方は、手術をして人工関節を入れます。跡が残りますし、人工物を体の中に長期間入れておく必要があります。ですので、日常生活で膝に違和感を感じる方も少なくありません。
幹細胞→幹細胞を投与すると傷ついた軟骨自体がご自身の細胞によって修復されます。そのため、痛みが軽減されて階段の上り下りが楽になったり歩行がスムーズになります。
「行きたい場所へ自由に移動することができない」これはとても苦痛なことです。気軽に外出ができず、最終的にはトイレに行くこともままならなくなります。また、痛みのせいで歩くのが億劫となると寝たきりの生活が待っています。人生を楽しむためには、「自由に歩ける」ということは非常に重要です。
例)糖尿病でありたくさんの薬とインスリン注射で治療中の患者様
従来⇒今までは、薬の内服やインスリン注射を行って外から補う治療が主流でした。
幹細胞→幹細胞を投与すると低下した「血糖値をコントロールする」という機能が改善されます。そのため、血糖値が落ち着き薬の必要性が低くなります。また、同時に糖尿病の合併症も改善が期待できます。
糖尿病は初期は症状が現れにくく治療の重要性を実感しづらい病気の一つです。ですが、症状が進行し合併症が生じると透析が必要になったり失明の可能性があったりと生活の質が非常に低下する怖い病気です。再生医療では、飲み薬など外から与える治療ではなく、患者様ご自身に備わっている体の機能を改善することができます。
ES細胞とは
「受精卵=将来赤ちゃんになる細胞」から作られます。
→メリット:ほぼ無限に増えることができ、体のどんな部分にでも変身できます。
→デメリット:倫理面に問題があります。本来は人として誕生することができた命から採取された細胞です。医療に用いるとはいえ命を扱うことに対して問題が残ります。また、拒絶反応が起こる可能性がある点も課題となっています。
iPS細胞とは
ES細胞と同じ性質を持つ人工的に作られた細胞です。ES細胞と異なり、受精卵から採取されるものではなく線維芽細胞という誰しもが既に持っている細胞から作ることができます。
→メリット:倫理面での問題がありません。また、患者様ご自身の細胞から作ることができ
るので拒絶反応が起こりにくいと考えられています。
→デメリット:癌化の可能性が0ではありません。その理由は、人工的に改良して作られた
細胞だからです。現在解決策が練られています。
体性幹細胞との違い 治療に用いるメリット
体性幹細胞は、私たちの体に既にある幹細胞です。全ての体の部位に変身できるわけではありませんが筋肉や軟骨、お肌など十分多くの種類に変身できます。現在、再生医療で最も多く利用されている幹細胞であり、その効果や安全性も示されています。
体性幹細胞はES細胞/iPS細胞と違い、倫理面や癌化の心配はありません。ご自身の細胞を用いるので拒絶反応も起こりません。朱セルクリニックでは、患者様からいただいた幹細胞を、委託施設ではなく、当社の細胞培養所で培養して管理します。そのため、細かいチェックが行き届いた非常に質が高い幹細胞をお届けすることができます。
「幹細胞治療ってあんまり聞いたことがないし自分の病気には関係ない話だな。」
このように思われる方がいらっしゃるかもしれません。ですが、朱セルクリニックでは既に以下のこのような病気に対して数多くの再生医療を行ってまいりました。いずれの治療でも、患者様から「再生医療を受けてよかった」という多くのお声をいただいております。
適応:糖尿病, 変形性関節症, 肝疾患, 美容(しわ, たるみ), 薄毛治療
治療は早めに始めることが大切です。重篤化したり合併症を生じると治療が難しい可能性もあります。カウンセリングだけでも結構ですのでぜひご相談にいらしてください。治療の選択肢の一つとして再生医療が加わると嬉しく思います。
今後も治療適応を増やしていきます。より多くの患者様が長年のご病気から解放され、より人生を楽しんでいただけるよう邁進しおります。
まとめ
ES細胞とiPS細胞の説明をしました。現段階ではまだ課題がありますが、解決できるように研究や実験が日々行われています。今後の医療への貢献が強く期待できる分野です。その反面、体性幹細胞は既に多くの治療実績があります。まずは体性幹細胞で長年のお悩みを解決しませんか。
その他、よくわからなかったことや、ご質問などございましたらお気軽にお問い合わせください。
医療法人香華会朱セルクリニック福岡院
理事長 坂口 尚